[調査研究]R−3関連 韓紙に関する調査[ノート]

[調査研究]R−3関連 韓紙に関する調査

韓紙に関する現地調査を行った。2018/12/07 8:00〜10:00

韓国の朝鮮王朝実録の複製本制作事例から、その復元に携わった紙漉工房を訪問した。

(1)安東韓紙(慶尚北道 安東市 豊山邑 素山里)

(2)原州韓紙(江原道 原州市 戊実洞)

拠点形成事業のコーディネーターでもある壇国大学校、朴助教授が企画した。日本からは、「和紙素材の研究」関連の大学院生、卒業生など22名が参加した。

・安東韓紙での集合写真 中央左の方は、安東韓紙代表 Young Gul, Leeさん

・韓国産の楮

・安東韓紙の今年の紙

・安東韓紙でのヒアリング時の見学の様子。流ちょうな日本語でご案内頂いた。

(1)安東韓紙でのヒアリング

韓国は風が強く湿度も低い。
原料は日本でいうコウゾと同じであるが、2種類あり、カジの木に近い品種。韓国の名前でボクッタ。楮はすべて韓国産の材料で漉いている。
少し荒い紙を漉く原料と、最高級の紙を漉く原料に分けて使用している。
紙によってはフィリピン産のガンピを混合する。他にも、マニア麻を混ぜる紙もある。

修復用の最高級紙には独特の煮熟液を作る。ゴマ植物の炭に熱湯を入れ、そのまま保存して煮汁を作る。アルカリ性で約ph11.5程度に調整したうえ、紙原料600kgを10時間煮てよい繊維を取る。
煮熟した原料は、水の中で酸素を入れて色を白くする。

・煮熟液の入った容器

・酸素で晒して、色を白くする。

ウエイバル

紙漉きウエイバルは基本は2層紙。
漉き舟で、横に滑らせるように、また紙料を簀にのせて動かしながら横に振って紙を漉く。
上下をひっくり返し紙床に置くことによって1枚の厚さを整える。
ネリはトロロアオイを使う。繊維を分散させる為。冷蔵庫で保存する。

干すのは板張りはせず、吊るすか網の上に置き天日に干す。凹凸がでるので、打ち紙をして平滑にする。
大きな打ち紙機がある。湿らせて、約100枚単位で打ち込みをする。
現在作っているのは、特に保存性がよく政府が使う厚紙を作っている。また、今年の復元用の紙は特に品質が良い。

・ウエイバルの漉き舟

・ウエイバルを漉く様子

・上下を変えて、2層に重ねていく。

・打紙を行う機械。打ち方は独自の工夫がある。

 

紙の乾燥に関しては、昔は、オンドル壁(湯の通った平滑な壁)の上に貼って乾かしたこともあると聞いたことがあるという。
その他、書画用紙を数多く漉いている。一般の紙は苛性ソーダ(NAOH)も使い煮熟を行う。
書道紙は絹紗を挽いて漉いている。

・色紙、書道紙など種類が多い。

・色紙、書道紙など種類が多い。

・店舗の風景。韓国などでも、韓紙のかなりの需要を担う。

 

(2)原州韓紙の見学

代表のJang Eung Yeallさんに紙を漉いてもらい、お話しを伺った。

ウエイバルを漉いてもらうが漉き方に勢いがある。ウエイバルでも、人によってそれぞれ漉き方が違う。

ネリも入れるがやや薄め。原料の状況によって判断する。楮やトロロアオイは自らも栽培している。

日本の手漉き紙の方々とも交流がある。

・Jang Eung Yeallさんの紙の漉き方

・原州韓紙の紙漉き道具

・原州韓紙の色紙を漉く風景

・色紙の原料

・黒い色紙の原料

韓国の色紙に関しては古くから漉かれているという。現在は顔料系の染料を使用しているがかつては自然の染料成分を用いたと言われている。

原州では、韓紙の漉き場はここだけ。過去には美濃和紙との国際交流も行ったことがある。

(記録:柴崎幸次)