R-1【共同研究】ウズベキスタン訪問(4) タシケント、ヒヴァ、サマルカンド、ブハラ訪問2019.02
ウズベキスタン訪問(3)の続き
2019/3/3柴﨑、鈴木、大柳、岩田、河合、王、周、ナフィーサ
3月3日(日)10:00 細密画家シェ・ムハンマド(Shamakhmud muhamedjanov)氏のお宅
ブハラの細密画家ダブロフさんは私の教え子。80~90年代に紙の研究を行ったが、関心を示す人がいなかったので止めた。30年間東洋学大学に勤めて退職した。イスファラには19世紀まで紙の工房があり、ユネスコのプロジェクトでコ―カンドの紙を再現するつもりだった。工房を作る資金があったが他の仕事があって、続けられなかった。紙の光沢は澱粉を塗っている。
絵具の接着剤はアラビアゴム、酢(葡萄のビネガー、リンゴ酢等)と卵を混ぜた物を持ちいる。卵に針のような物でつついて小さな穴をあける。その穴から余計な物が出ないように白身と黄身を取り出す。空になったら卵にあけた穴を少し広げて殻に酢を入れ、卵と同量の酢を測る。酢と白身と黄身を混ぜる、黄身は油分、白身は糊の役割を果たす。絵具はアラビアゴムで練って固形絵具にしておく。それを卵酢と水で溶いて描く。白は鉛白、鉛白を焼くと赤色が得られる。
青はラピスラズリ、水色はトルコ石、黄色はサフラン、黒色は鍋の底についた煤を用いる。オスマという植物から緑色が作れる。絵具はサンプトペテルブルグで購入する。金泥は金箔を2時間アラビアゴムを水で溶いたもので練って作る。アラビアゴムは2日間、水に浸して布で濾す。オークルとサフランと金泥を混ぜて塗る。金箔を貼る時はガーリックを切って断面をこすりつけて貼る。細かな金箔を撒く時は絵具を塗って乾かないうちに撒く。また澱粉を塗って金箔を撒く。日本では竹筒に入れて金箔を撒くと、以前日本人から聞いた。ウズベキスタンでは細かい金を紙に載せて撒く。枠線はカラス口を使って引いた。紙漉きは水に酸が含まれていて紙漉きに使えなかった。また石に紙を干した。麦を焼くと上に甘いものが出来て、それが澱粉にもなる。紙を磨く時は梨の木から作られた木の板で磨いた。澱粉は7回塗って乾かし、1年経てから磨く。歯のエナメル質のように紙の保護になる。カボチャの液を入れるとネズミが食べなくなる。澱粉を7回塗ると紙が黄色くなったが、塗らなければもっと黄色になり弱くなる。
昔、紙漉きに使われた馬の尾で編まれたもの。
3月3日(日)14:00
アミール・ティムール博物館、ハビブラエフ・ノジム氏(Khabibullaev Nozim)
ノジム氏 「ヒヴァで最も有名な紙は王様の勅書。タシケントのイスラムセンターにアートブックメイキングコーナーが2020年に開設される予定。スポンサーはロシアのエネルギー会社を経営するウズベキスタン人の大富豪でアルシエルさん。イスラムに関する本を収集して寄贈する。ノジムさんもそこの館長かスタッフとなる予定。①紙の製造②紙の加工の工程③紙を使ったミニアチュール等④装丁⑤本の作り方、リトグラフ、印刷技術、各地の紙(コ―カンド、サマルカンド)、ムスリムの紙(厚くて両面に書かれた)等の展示を予定している。サマルカンドの紙は薄く、光沢があり、丈夫である。リネン、コットンから作られた。コ―カンドは後になるので桑の皮から作られた。ソ連のゾートフは顕微鏡調査と自己の調査によるものである。それ以前の紙の研究者は年寄りなので目も悪く、手触りで判断していた。東洋学研究所で不明な紙は全て「東洋の紙」と表記されているので、判別の方法を作ったら有難い」
柴崎教授 「コ―カンド紙は桑の皮ということでしたが、調査の結果桑は出ていない。桑は靭皮繊維。サマルカンドではコットンで綿から作られたという認識はあるか?」
ノジム氏 「コ―カンドの紙といっても16世紀にサマルカンドが破壊され、職人がコ―カンドに移り、技法は多少失われたかもしれないが、残った技法で作られた。時代と場所は変わっても、もともと技法は同じである。15世紀まではサマルカンドの紙、それ以降はコ―カンドの紙と呼ばれる。サマルカンドが破壊されてしばらくの間は紙が作られなかった。紙は中国から伝わった。サンクトペテルブルクの博物館のビン・ブンタバデスという人は11世紀の書籍をチャイナサマルカンド紙と呼んでいる。中国の技法を用いてサマルカンドの材料で作られたからである。中国では竹から紙を作っていたが、サマルカンドでは綿布から作った。蔡倫以前にも紙は作られた。タラスの戦いの年に製紙法が伝わったというのは疑問である。紙職人は普通戦争には連れて行かない。パーチメントを水で洗った時に浮いたものを救って紙のようなものができる。アラブの紙を研究したことがあるが、アラブはパーム(ヤシ)から作った」
19:10空港へ→19:50空港着→21:20タシケント発(KE942)
2019/3/4 7:40ソウル/仁川(ICN)着→10:35ソウル/仁川(ICN)発→12:30名古屋(NGO)
(記録 岩田、柴崎)