[ノート] シーボルトの収集した和紙について 2017.4

ミュンヘン五大陸博物館:Museum Fünf Kontinente(旧称 ミュンヘン国立民族学博物)所蔵のシーボルトが収集した和紙に関する調査

ミュンヘン五大陸博物館、Dr. リッヒツフェルト(Dr. Bruno Richtsfeld)のご厚意で、シーボルト(Philipp Franz von Siebold、1796-1866)の収集した和紙に関する目視による調査と撮影を実施した。
ミュンヘンでは、2016年4月和紙に関する講演(バイエルン独日協会主催)を行ったが、その時から、日本の和紙とドイツの医師・博物学者のシーボルトとの関係に注目した。

シーボルトは1859年から1862年、長男アレクサンダーと共に2度目の訪日を果たし、日本関係資料を収集している。今回の調査対象は、日常に使用された紙及び紙製品であり、首都大学東京・牧野標本館所蔵のシーボルトコレクション(植物標本)の和紙のジーナスカバー(Genus Cover、動植物分類上の標本台紙)と同時期の収集品にあたる。

現在の日本には、江戸期に各地で作られた様々な和紙がほとんど残っていない状況から、シーボルトコレクションの和紙は、当時の和紙生産の状況を知る上でも貴重な資料である。さらに、シーボルトの主な収集地(長崎、箱根、江戸、日光など)と和紙の産地の関係にも注目したい。

今回の調査では、21種類の和紙の撮影を行った。

外観写真とその繊維を撮影した。本研究ノートの紙の名称は、今回の訪問で見せて頂いた紙の様態を表すために筆者がつけている。五大陸博物館所蔵シーボルトコレクション関連資料集成p97の名称を参考にしたが、〝文紙10種〟や〝印刷した紙5点〟など、細かい分類のない紙の類にあたる。よって、シーボルトコレクションの記録と表現が異なるものがある。繊維を撮影した理由は、紙の様態がわかること、原料や印刷方法がほぼ特定できることなど、紙質自体を記録するためである。参考として、ページの終盤に牧野標本館所蔵の植物標本の和紙のジーナスカバーも掲載した。

また、本ノートは、これまでのシーボルトコレクション関連の報告などと随時照合し、修正を行うものとする。

 

見せて頂いた、シーボルトコレクションの和紙。

 

1,文様の紙(Printed on Japanese Washi)

文様の入った楮紙。

おそらく楮紙、非繊維物質も若干あり。

 

2,青いチリが入った紙(Paper with blue fiber)

全体的に青く、おそらく漉き返しかと思われる。この種類紙は、植物標本にも用いられた。

おそらく楮紙、または、漉き返しの和紙。非繊維物質も若干あり。青い繊維が混入。

 

3,楮紙(Mulberry Paper)

繊維の撮影風景。

 

楮などの繊維。

 

4,楮紙模様入り(紙に刷った木版の見本)(A sample of woodcut print on paper)

繊維、細かく、紙密度高い。

 

 

5,版木による文様紙 (Woodcut block prints on paper)

彩色は、おそらく版木による。

 

6,俳句用紙(Washi for writing poetry)

檀紙のような凹凸のある質感。

 

7,花・玉の版画文様紙(Woodcut prints of flowers and balls)

 

8,タパ(樹皮布) のような紙(Paper such as Tapa)

おそらく紙ではない。


9,熨斗(のし)(japanese Noshi)

 

プリントした熨斗(のし)の原紙。

 

10,型染め紙、袋状(Dyeing stencil paper)

布の様な柔らかさがあり、繊維からもそれが読み取れる。

 

11、東海道五十三次の浮世絵カード(Ukiyo-e card of Old‐time fifty‐three stages on the Tokaido highway)

 

切り取りの目印がついている。裁断後、タテ3インチ、ヨコ5インチ程度。浮世絵のカード原紙。

 

12、楮紙(Other paper、Kozo paper)

きめ細かい楮紙。
13、雁皮紙、包み紙と中身の雁皮(gampi paper)

包み紙の楮紙。印刷部分。

きめ細かい雁皮紙、数十枚が包まれている状態。

 

14,特異な紙(Other paper?

おそらく、非繊維物質の紙

 

15、打雲、墨流し、その他(Utigumo,  Mabling and Other paper)

本の装幀に使う見本。

 

ややサイジングなど行っている紙。

 

16,千代紙(Chiyogami 1)

 

17、染紙、版木による(Paper dyed with woodblock print)

 

 

18、染紙、型染め紙(Paper dyed with paper pattern)

型染めによる紙。

 

19、草木花鳥図 シワ入りの紙(Paper with a crinkled texture)

花鳥の図に、シワが入り、柔らかい質感の紙。揉み紙、檀紙とのやや違う感触の紙。

 

20,油紙等(Oiled paper)

油紙。2×3判程度。

 

21,茶色、不明の紙(Brown,Other paper?)

 

 

(参考)牧野標本館のシーボルトコレクション

http://ameba.i.hosei.ac.jp/sbweb/

写真は、2015年3月柴崎が、牧野標本館を訪問し許可を得て撮影した。

※標本台紙に使った紙と、ミュンヘン五大陸博物館が所蔵する紙は、同一または近いものがある。

和紙の標本台紙は、紙そのものに劣化はなく、よい紙の選択だったのではないだろうか。

 

 

協力(cooperator)
・Dr. ブルーノ・J・リッヒツフェルト(Dr. Bruno Richtsfeld), 五大陸博物館(Museum Fünf Kontinente)
・浅野昭博(Akihiro Asano), バイエルン独日協会(Deutsch-Japanische Gesellschaft
in Bayern e.V.)
・衣川富士子(Fujiko Kinugawa-Kluehspies),バイエルン独日協会

・首都大学東京牧野標本館(Makino Herbarium (MAK), Tokyo Metropolitan University)

 

参考文献(References and Citations)

・牧野標本館WEBサイト(Website of Makino Herbarium (MAK), Tokyo Metropolitan University)
・五大陸博物館所蔵 シーボルトコレクション関連資料集成(Compilation of Historical Materials from the Five Continents Museum’s Siebold Collection)大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館