和紙素材の研究展Ⅳ 豊田市美術館ギャラリー 2017.2/21~3/5
和紙素材の研究展Ⅳ 豊田市美術館ギャラリー
愛知県立芸術大学 柴崎幸次研究室+豊田市和紙のふるさと
和紙素材の研究展Ⅳ、展覧会報告です。
今回、最大規模の和紙素材の研究展です。総勢42名です。
和紙を通じ、それぞれが、それぞれの方法で作品に仕上げている。バリエーションがあり、中身がある作品が多く並びました。
2月21日、3月4日、計2回のギャラリートークをさせて頂きました。内容をダイジェストでお伝えすると・・・。
・この展覧会の主旨。芸大に和紙工房を作ったこと。
・最初の作品紹介、鈴木猛利さんの〝無由〟(むゆう)※紙漉の心象〝無由〟。好きなことやるのに、理由はいらない・・・の言葉について。
・藤井達吉・創作染織図案集の言葉(最初に書いてある図案集を依頼された時の制作に対する苦悩・・・みたいな言葉と、それでも図案集の仕事を受けた意味について)また、1926年に発行された、主婦之友社〝素人のための手芸図案の書き方〟の素人の意味。素人とは、専門家のように既成概念にとらわれず自由な境地で制作ができる態度などの藤井の精神性について。
・三河森下紙(色紙)の復活の話。色入りの三河森下紙を漉いていること。
・今回の作品紹介、出品作家達のトークなど。
全てではないですが、作品もWEBにて写真で紹介します。全て和紙を使った作品です。
(全部載せされませんでした。すいません)
ギャラリートーク風景
ギャラリートーク風景
三河森下紙 右はそのままの紙、左が打ち紙。
三河森下紙 土入り・消し炭入りの色紙
三河森下紙 土入り・消し炭入りの色紙
沖田 類佐 〝サニーとはちにんのかみさま〟和紙の折りたたみ絵本
小田 苑子 〝A moment for eternity〟 厚みや色合いの異なる和紙を組み合わせて、 特別な日を彩るアクセサリーを製作。
内藤 瑠里 〝カミのイシ〟 「にじみを活かす」「継ぎ目なく貼る」「布のように縫う」など、和紙の持つ可能性を探りながら制作
秋本 知花〝酉年模様/海の生き物模様/虫模様〟 色鉛筆でも塗ることができるように漉かれた、楮と竹の和紙。
戸田 愛 〝ポリゴニスム〟自分で漉いた手漉き和紙を用いた立体展示物の試作。
今村 駿佑〝和紙スクリーン〟
岡田 有紀〝見つめる〟細かい切り絵をするにあたり、丈夫でありながら切りやすい和紙を使用。
武馬 淑恵〝あきはる autumn to spring〟愛知県芸術大学のキャンパスで見つけた秋の実りから春色を抽出。ハナノキから産まれた桜色は、自作の手漉き和紙に。クヌギから産まれた大地の色は、佐賀の名尾和紙に。
豊増 百合加 和紙のスクリーン制作(映像は内藤 瑠里)
秋田 和弥 〝直の波紋〟立体的な波紋になる不思議さを狙った照明
岩田 明子〝綾〟平安時代盛んに作られた装飾経のうち紺紙金銀経の美しさを参考に、藍で暈しを入れながら截金で七宝文様を描きました。
森川 美紀〝夜の月Ⅰ〟学生時代の記憶は昼間の月のように朧ではあるけれど間違いなく私の中に存在し続け、その場に戻った瞬間、夜の月のような鮮明さを取り戻した。
浅田 泰子〝最強Mix vol.1〟アクリル絵の具を使い、自分で漉いた和紙に描きました。 和紙を自分で漉いて作ることは、紙の厚さや形を作品に合わせて自由に変えられる所が面白いと感じています。
髙田 裕大 〝雲〟〝火〟柴崎研究室制作の和紙
木下 幸子〝赤い苑〟 “まぁるいかたち”が表すもの。 集い・繋がり・引き合う形。 それは穏やかな心地よさと、どこか緊張感をも感じさせる魅力があると思います。
太田 晶〝藤井達吉による図案を基礎とした パターンの研究〟藤井達吉 創作染織図案集(1933年 文雅堂)より図案を3つ選び、パターンを制作しました。
展覧会の表示。
展覧会の入口
展覧会の様子。
鈴木 猛利〝無由〟意味: 理由は必要ではない メッセージ: 紙漉きが楽しかった。 この言葉を書きたい、伝えたい。 好き、に理由は必要無い。 誰かを助けるのに、理由は必要無い。 心に起こる感情に、理由は必要は無い。
黒田 愛美〝青果紙 seika paper〟野菜や果物を育てる過程で廃棄される枝を原料とする紙と、その紙を使用した食空間を彩るテーブルウェア。
石故 晴菜 〝海にたゆたう―和紙のアクセサリー〟簀桁をたゆたう和紙の繊維が、無限に広がる海に見えました。 そんな和紙を波に見立て、海を旅したシーグラスを包みました。
仲宗根 奈美〝和紙のアクセサリー〟水を含んでいる状態の和紙の質感を表現したアクセサリーです。 国産楮を使用しています。
藤井達吉〝創作染織図案集〟台紙は、小原和紙。
榊原 健祐〝Tatsukichi Fujii Graphics〟藤井達吉の図案をモチーフにしたポスター。軽妙で素朴なラインは、和洋を問わない。 藤井の図案と西洋の木型文字と現代の色のジャズセッション。
松原 智子〝輪廻〟三河森下紙に日本画材である墨、胡粉、金泥を用いて、永遠に続く梅の花を描きました。
川澄 綾子〝寝返り〟眠れない日は寝返りばかりうって壁の木目をなぞっています。目を閉じるとザラザラした薄闇、不快なぬるいシーツ、そんな、なんとも言葉にするのが難しい時間を和紙に漉き込んで表現しました。
河合 友理〝焦点の先〟紙の素材感や色味を大事にして制作しています。グレーは消し炭の粉末を材料に混ぜ漉き込んでいます。
三河森下紙の色紙。
豊田市の卒業証書。賞状の原紙
秋本 知花〝酉年模様/海の生き物模様/虫模様〟丸、三角形、四角形といった単純な形を組み合わせて模様を制作しています。 和紙は熊本県にある水俣浮浪雲工房で購入したものを使用しています。 色鉛筆でも塗ることができるように漉かれた、楮と竹の和紙です。
鈴木 春香〝森羅 -songs of the universe-〟紙の透け感をいかして複数枚の紙の表面・裏面を使ってペンで描きました。
望月 遥〝贈り物のむこう〟贈り物をテーマに実家からの仕送りがモチーフです。ダンボールを開けた瞬間、送り主の表情や想いが香りと共にそこに広がり包み込まれるような気持ちになる、そんな不思議な力を表現したいと思い作りました。
武 穂波〝香の序(かのじょ)〟「源氏香の図」の幾何学形を元に形を考えています。「源氏香」は香道の楽しみ方のひとつで、5つの香りの順番が関わっています。 そこで「香り」の「順序」から「香の序」としました。
置塩 ゆかり〝火天花〟紙のもつ、しなやかで柔らかい雰囲気を出したいと思って制作しました。
外山 敦子「木型遣油紙箱」和菓子屋を営んでいた実家にあった古い木型を使いました。工芸的にも美しい日本的な紋様と油紙加工した和紙とが相まって、日本発信の新しいメディアとしてのギフトボックスを制作しました。
杉 佳子〝浮の情景〟私たちのまとっている塵や埃、時間。些細で見えにくいものを上質で美しい存在に表現するため制作しました。柴崎研究室で選ばせて頂いた和紙に岩絵具で彩色し、それを割いて使用したのですが、解かれた植物が紙となり、砕かれた岩が絵の具となって新たなカタチで画面で出会うことに、楮などの毛足の流れもあいまって浮遊と沈殿を行き来すような感覚になります。
小山 智大〝from.〟止められぬ現在こそ不確かである。 しかし、過去と未来は確実に動線を結ぶ、 故に私は存在するのだ。 技法: サイアノタイプ ( cyanotype ) 材料: 和紙(小原楮)
最後に、芳名録。米粉入り森下紙。表紙は、豪雨に打たれた模様の厚紙。