R-1【共同研究】ウズベキスタン訪問(1) タシケント、ヒヴァ、サマルカンド、ブハラ訪問2019.02

R-1【共同研究】ウズベキスタン訪問 MOU締結、タシケント、ヒヴァ、サマルカンド、ブハラ訪問2019.02

2019年2月24日~3月4日 サマルカンド紙の調査及び、ウズベクの古いタイル研究をスタートさせるためウズベキスタンを訪問。

参加者:柴崎幸次、鈴木美賀子、岩田明子、大柳陽一、浦野友理、王玲、周業欣

ウマロヴァ・ムノジャット、ナフィーサ(通訳)

研究協力:名古屋大学タシケント事務所 エルドル、今村栄一

【2019/2/25】タシケント市内訪問

10:00 芸術アカデミーミニアチュール博物館、MOU締結

 

左端から、ミニアチュール博物館副館長、国際部部長、副館長フィルザアブドラフ先生、芸術アカデミー館長カラシーバ先生、ニョズザリ・ホルマトフ氏先生、ショーマフムット先生(Shamakhmud muhamedjanov

2段目写真左から、書籍保管館長、スタッフ5人

芸術アカデミーカラシーバ館長より、芸術アカデミーの方針は紙とミニアチュールについて研究することなので、日本と紙や作品についての意見交換を期待しているとのことで、研究として両者の意見が一致し、MOUを締結した。本研究は、3年前にNIFADでニョズザリ先生への訪問から始まったものなので、この締結について感謝している。今後は、お互いの研究成果について交流したい。

紙片調査結果の報告と顕微鏡写真について説明し、写本の情報提供を希望した。今回の参加メンバーの紹介を行った。

カラシーバ館長「トルコの博物館でミニアチュールを見てきました。そこから150点のミニアチュールの写本画像を貰ってきたので、今後研究をしていく予定です。ティムール時代のものがあれば、お見せします。」

ショーマフムット先生「1968年、12歳の時にナボイ博物館の展覧会でミニアチュールを見たのをきっかけにミニアチュールに関わっている。ミニアチュールを書くためにも紙について知ることが必要と思い、芸術アカデミーで30年ほど修復に携わった。師であるゾフタフ先生の研究を継続させている中で、柴崎の発表と同じように紙の材料は麻とコットンであるという結果には賛同している。また1年間イランでも修復の仕事をしており、イランにも修復に興味がある人が多いとのこと。ニューヨークでは自分のミニアチュール作品の発表をしたが、そのときアメリカでも修復には可能な限り当時と同じ紙を使用することを知った。今年で65歳だが、ミニアチュール、紙作り、金の加工全て自分でやっている。古い紙もたくさん持っている。古い書きかけの本を使ってミニアチュールを書いたりしている。イランでは修復のために日本の和紙に澱粉を使って修復していたが、ウズベキスタンでは古い本の紙を使っている。ゾフタフ先生が記録した科学アカデミー所蔵の本のデータ記録が科学アカデミーに残っている。私も持っている。すべての研究をしているときりがないが、第一にしているのはミニアチュールについて。インドが発行した紙の製造法も読んで漉いてみたりもしているとのこと」

カラシーバ先生「ミニアチュール作家には紙を研究している人も多いが、それぞれやり方が違うので情報共有をしていきたい。」

副館長フィルザピルサ・アブドラフ先生「芸術アカデミーはミニアチュールの研究機関なので、ここに来てもらえて嬉しい。当館の目標は紙の復元。ウズベキスタンでは文学作品が人気で、保存のための紙の研究が継続されるよう力を入れている」

柴崎「科学アカデミーのバフロム所長に昨年の10月に日本でお会いし、ミニアチュールの図録制作について話を進めている。現在、資金と協力者を集めている。科学アカデミーの図録として作るが、ウズベキスタンにとってベストな図録となるよう考えている。日本の印刷技術(特に金箔の再現度)について説明し、それらの図録に関することは専門家の意見も集めている。芸術アカデミーにも周知しておきたい」

・最後に共同研究のため今後も長い時間をかけて協力してほしいことを伝えた。

この後MOU締結、テレビ取材を受ける。

 

11:50 芸術アカデミーミニアチュール博物館訪問

ショーマフムット先生に研究経過報告、紙のサンプルと紙の地図、大学工房の紙を紹介。

「簀の目がこの紙にはない。サマルカンド紙は簀の目がある。昔の紙を漉く道具は、馬のしっぽの毛と竹が使われていた。乾燥は、火で温めた石の上に紙を伏せて乾かしていた。リネンは布を水に浸して叩く。木造のおけ(臼?)に木で搗く。麻の布はヘンプとリネンのミックスかもしれない。現在少しずつリネンの加工もしているが、化学薬品が入っていて保存が短くなっているとのこと。15世紀には豊富な種類の材料が使われていたのではないか。19世紀は桑の靱皮となる。15世紀コーカンドのウバイダラ(←人名)の紙にはウォーターマークがあり、その人の紙を持っている。16世紀のサマルカンド紙は、なぜか分からないが質が良くない。紙が薄く、ザラザラした面が表にくるように2枚貼り合わせた紙が作られている。また昔、夫婦で紙漉きをしている人達を見たことがある」

2階のミニアチュールや道具、工芸品の展示室を見学。見学しながらショーマフムット先生に色々質問する。

鈴木「金彩について:金は高価なためオークル、サフランを混ぜて使った。接着剤は卵

浦野「紙の加工について:小麦の澱粉を塗って1年寝かせてから7回磨いた。

ラジオの取材を受ける:なぜサマルカンド紙に興味を持ったのか、これまでの研究の成果について、復元した紙を何に使うのかなどを質問された。

14:00  タシケント国立図書館(MOU締結)

写真左から、ディレクター、ナギーナ(Nargiza Zoitova)先生、スタッフの方

ディレクター挨拶「図書館はウズベキスタン内に分館がいくつかあり多くの書籍を持っている。修復の技術と人材育成のために研究に協力してほしい。図書館からも日本へ学びに行く機会を作っていきたい」

ナギーナ先生は書籍の年代調査をしていきたいとのこと。

柴崎「非破壊で紙の調査ができるため、多くの本の調査を行いたい。年代がわからない本が多くあるので年代を明確にする調査を共同で行いたい。人工知能を使ったリサーチの説明」

ナギーナ先生は書籍の年代調査をしていきたいとのこと→年代測定は破壊調査になること、現在ディープラーニングである程度分析していることを伝える。

 

 

シュフラット先生に研究経過報告、カメラ貸出、日本セミナーの案内

カメラ画像のアップロードシステムについて。研究室のパソコンでサイトに繋げ使い方を説明。しかしインターネット回線が非常に遅く、表示に時間がかかっていた。日本セミナーの案内。日本セミナーにシュフラット先生を講師として参加してもらうことを説明。了解を得た。

 

16:30  ウズベキスタン芸術大学訪問

ジオドラ・ファルモトフ先生(絵画担当の先生)、学部長、ディルフューザ先生、ファジラット先生、ベグゾット先生、情報部門の先生、グラフィックの先生:アキバル・ホジャイフ・アブザイ先生

 

・これまでの、研究経過報告の報告を行った。また、学長が変わったこと、新学長は別の仕事で今回は不在だが、研究内容は伝わっていることを聞いた。ディルフューザ先生「今後研究発表や4か国語くらいに翻訳した研究冊子を作る予定はありますか?」

柴崎先生「中間報告書はありますが、現在は日本語です。ロシア語に翻訳中です」

ファジラット先生「MOUの規約で学生が留学することは可能ですか?」柴崎先生:研究生、研修生の制度について説明。単位互換をするなら、新たに協議が必要なことを説明した。

・日本セミナーには、NIFADから2人招聘したいことを伝える。

・ベグゾット先生に、データのアップロードシステムに関する説明。

・簀桁と大学で漉いた紙をベグゾット先生に渡す

ベグゾット先生は前回の中国セミナーで見たビーターを自作。今回ミニアチュールの学生が同席しており、学生の作品などプレゼントを頂いた。

・サマルカンド紙の研究会の設立について

紙の研究会設立のため現在政府に申請中のため、書類や組織の内容を決めていきたいので日本ではどのようなものなのか教えてほしいとのこと。

柴崎「初期の会長は紙の研究に詳しい人。紙の職人や制作者、研究者が紙を持ち寄り情報交換している。年一回2泊3日くらいで各地の工房見学している。開催地は紙の産地をローテーションしている。ウズベキスタンこの活動が始まれば、柴崎も参加したい」

 

 

ウズベキスタンのブルータイルについて

NIFADにはタイル専攻があるとのこと。6月に資料が欲しければ用意してもらえるとのこと。タイルの研究室を案内してもらう。

NIFADのタイル研究は主に建物の修復のためであり、年代や種類、復元研究などを行っている。廊下には各年代のタイル4種類の複製が展示されていた。教室ではタイルの作り方を見せてもらった。

タイルの作り方概要

①デザイン画を描く、②原寸大に拡大、③転写、④粘土で作る、⑤切る、⑥焼く(一回目)、⑦色をつける、⑧焼く(2回目)焼くと縮むため、小さい試作でどのくらい縮むか測定し、本番は大きめに作っておいて一気にまとめて焼いている。大体10パーセントほど縮む。

・オリジナルの青い色がうまく出せない問題があることを知っているか→知っているが、うまくいかなかったのは修復されたタイルの色に合わせたからではないだろうか。

・発掘調査はしているか→している。(その先生は)30年NIFADに勤めていて遺跡の修復をしている。ただ、観光地の遺跡の修復は主にドイツが行っていた。

・サマルカンドのレギスタン広場など、タイルの色がそれぞれ異なるのはなぜか→わざと変えているという説や経年劣化説、ばらばらに作られている説がある。(どれが正しいかは分かっていない)

・青の元素の調査はしたか→していない。

 

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R-1【共同研究】ウズベキスタン訪問(2) タシケント、ヒヴァ、サマルカンド、ブハラ訪問2019.02

(記録 岩田、柴崎)