文部科学省委託事業 標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究 「拡大教科書の効率的な作成方法について」 平成23年3月

参考文献、脚注

〈参考文献〉

1)文部科学省初等中等教育局,拡大教科書普及推進会議 第二次報告,平成21年3月30日

2)富士ゼロックス株式会社,平成21年度教科書デジタルデータ提供の在り方に関する調査研究事業,2010年3月31日

〈用語〉

  • CSS(Cascading Style Sheets):
    HTMLやXMLの要素の修飾・体裁を指示する表現言語。文書構造言語HTMLと分離して使用する。
  • EPUB:‌米国の電子書籍の標準化団体国際電子出版フォーラムIDPFの公開された仕様の電子書籍用ファイル形式の規格。
  • HTML(HyperText Markup Language):
    ウェブのドキュメントを記述するためのマークアップ言語。
  • IDML(InDesign Markup Language):
    公開されたInDesign互換フォーマット。XMLベースのファイル形式。
  • XHTML(Extensible HyperText Markup Language):
    HTMLをXMLの文法で定義しなおしたマークアップ言語。
  • XML(Extensible Markup Language):
    拡張可能なマーク付け言語。文章構造や見栄えに関するタグ等の指定を、文章とともにテキストファイルに記述する。目的に応じてタグを定義できる汎用的な仕様をもつ。
  • アクセシブルPDF(Portable Document Format ):
    読み上げ機能やスクリーンリーダーへの対応したPDFデータ形式。読み上げには音声エンジンが必要で、PDFデータも読み上げ順、文字情報を持たない画像等の読み上げ等作成時の配慮が必要。
  • 拡大教科書DTPデータ:
    拡大教科書の印刷用データ。レイアウト変更型、原本拡大型は別データになる。
  • 教科書マスターデータ:
    各種媒体用データ展開のための仕様を備えた原本教科書DTPデータ。
  • 原本拡大型:原本教科書と判型、レイアウトが同じで書体変更・文字サイズ拡大したもの。
  • 原本教科書DTPデータ:
    原本教科書の印刷用データ。ページレイアウトデータ、画像ファイル等を含む。
  • 準備データ:
    原本教科書DTPデータを拡大教科書を作成しやすいように編集した制作準備段階のDTPデータ。テキストは段落スタイル等が適用済み。拡大教科書用に書体変更し、また変更後の字体に不備がないよう確認・調整済みの状態にする。
  • 書籍の構造:
    主なコンテンツの構成要素(表紙、目次、序文、章等)と順序を示したもの(目次)。
  • 段落スタイル:
    文字組版属性をまとめて登録し、複数の段落単位のテキストに繰り返し適用可能なAdobe InDesignのテキストの体裁を設定する機能。章見出し用のスタイルを登録した場合、その文字組版属性は、文字サイズ・書体・字間・行送り・色等複数設定することができ、1冊の書籍中で出現する章見出し対して同一の章見出し用スタイルを適用する。個別に複数の文字組版属性を指定する必要がなく統一した表現ができる。またスタイル適用済みのテキストは、適用元のスタイルを変更することでその文字組版属性を一括変更ができる。
  • 点字教科書:
    視覚障害者のため文章を凹凸のある点字で記述した教科書。紙、フィルムで制作され、図や絵などはエンボスで表現する。
  • ビットマップ画像データ:
    デジタルカメラで撮影したデータやスキャナーで読み取ったイメージデータ。画像編集ソフト(Adobe Photoshop)で編集・加工する。
  • 文書構造:
    書籍名や文書タイトルを起点に章・節・項等の見出し、文章、補足図・写真等、キャプションなどのテキスト要素の順序・階層を示したもの。
  • ベクトル画像データ:
    図形描画ソフト(Adobe Illustratorなど)で図表・線画イラスト等を作成したデータ。
  • マルチメディアDAISY教科書:
    デジタル録音図書の国際標準規格による視覚障害者や識字障害者・学習障害者(ディスレクシア)のためのデジタルマルチメディア図書のことで、画面上表示されるテキストを順次ハイライト(強調表示)しながら音声読み上げする機能をもつ。
  • レイアウト変更型:
    拡大教科書の標準規格の基準版(および単純拡大版、単純縮小版)。

おわりに

「拡大教科書の効率的な作成方法について」報告書 › おわりに

おわりに

本研究では、「拡大教科書の効率的な作成方法」を示すために、教科書発行者へのヒアリングから拡大教科書作成における具体的な問題を明確化してその解決策を考察し、さらには将来的な教科書データのあり方までを提案してきた。その中で重要視すべきことは、原本教科書DTPデータをいかに作成するかということである。

原本教科書DTPデータは、出版物としての原本教科書を印刷するための版下データであるが、同時に「教科書コンテンツ」の情報そのものでもある。よって、今後は原本教科書を出版することのみを目的とするのではなく、拡大教科書を含む様々な展開を想定した上で原本教科書DTPデータを製作していくという見地に立つことが必要である。またそのことが、結果的に拡大教科書の効率的な作成につながっていくと考えている。

本研究で示してきた諸問題等へ解決方法は、いくつかある中の一考察であり、またこの事業全体を見渡せばその他の問題も残っているということも認識している。本研究の立場では、個々の問題対処においてその解決法を見出すと同時に、そもそもの「教科書コンテンツ」をデザインする時点での発想転換が必要であることもあわせて提案したい。

ただし、理想的な「教科書コンテンツ」としての原本教科書DTPデータのあり方というのは当然ながら一つではなく、科目や学年などによって異なっており、そこに教科書出版社独自の方針も加わってくる。よって、今後は様々なケースステディを積み重ねることで、拡大教科書にも適した原本教科書DTPデータの基本的なあり方を整えていくことが必要であると考えている。

本研究では主に小学校の教科書を対象としたが、今後は中学校における英語や社会などの科目、さらには高校の教科に対する研究も行いたい。高校の単純拡大教科書に関しては、書体変換まではコストをかけずに製作できれば一歩理想に近づくが、教科や種類が圧倒的に増えるので、新たな問題が発生してくることも大いに考えられる。その中で、やはり原本教科書DTPデータを「汎用性のある教科書データ」としていかに完成させていくかが重要となるのである。

本研究を進めるにあたって、調査研究委員の皆様には大変お世話になった。各委員はこれまで様々な立場で拡大教科書と関わってこられ、有益なアドバイスや証言を多々いただいた。また、ヒアリング調査に協力して下さった(社)教科書協会をはじめ、東京書籍(株)・(株)学研教育みらい・(株)帝国書院・大日本図書(株)・(株)三省堂・(株)教育芸術社・開隆堂(株)・光村図書出版(株)、そして委員にも入っていただいた(株)新興出版社啓林館と教育出版(株)には、特別の謝意を示したい。さらに、電子書籍化への実験として(株)モリサワにはソリューションの貸与など協力をいただいた。

各社の努力に敬意を示しつつ、本研究が今後の拡大教科書の作成の一助になれば幸いである。