文部科学省委託事業 標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究 「拡大教科書の効率的な作成方法について」 平成24年2月

本報告書は、文部科学省の委託事業として、愛知県公立大学法人愛知県立芸術大学が実施した平成23年度「標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究」の成果を取りまとめたものです。
従って、本報告書の複製、転載、引用等には文部科学省の承認手続きが必要です。
文部科学省委託事業
標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究
「拡大教科書の効率的な作成方法について」報告書研究代表者 柴崎幸次平成24年2月著作:愛知県立芸術大学 美術研究科 デザイン領域 柴崎幸次研究室
執筆者:柴崎幸次 須藤遙子 伴秀之
発行:愛知県立芸術大学 美術研究科 デザイン領域 柴崎幸次研究室

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はじめに

本報告書は、文部科学省から受託した平成23年度「標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究」(以下、本研究)について、最終報告書としてまとめたものである。

本研究は、「拡大教科書の効率的な作成方法について」を課題として、拡大教科書を出版する教科書発行者及び、教科書のDTPデータを扱うことが 可能な契約関係にある拡大教科書の作成者が、ローコストでクオリティの高い拡大教科書の作成を実現することを目標として掲げている。教科書発行者は、弱視 児童や教員というユーザーにとって、授業に使いやすい拡大教科書を作成するという努力義務を負う。同時に、通常の教科書と同等のクオリティを保ちつつ、コ ストがかかり過ぎないように効率よく拡大教科書を作成することが求められる。このような困難な条件をクリアするために、本研究では、教科書発行者が現在 行っているDTPデータを活用した拡大教科書を作成する方法と、さらにそのデータを活用し、電磁的記録等のための教科書データのテキスト抽出や画像抽出の 簡便な方法を研究する。

また、将来的なビジョンとして、電子書籍等へのデータ変換について[汎用性のある教科書データ]のあり方について も提案を行う。弱視の症状には かなりの個人差があることが指摘されており、標準規格よりもさらに大きい文字の教科書や白黒反転の教科書を求める声もある。昨今では、タブレット型パソコ ンなどに対応した電子書籍やPDFなど、より多様でアクセシブルな教科書も検討されている。よって、汎用性のあるデータの活用が、さらに求められるように なっていくだろう。こうした背景から、今後は教科書そのものの設計が徐々に変わっていくことも予想され、「印刷物としての教科書」から「コンテンツとして の教科書」へと移り変わるのではないかと考えている。こうした観点から、本研究は昨年度行った「拡大教科書の効率的な作成方法について」の研究をより深め る形で実施する。

第1章は、本研究の概要として目的、社会的背景、実施体制、スケジュール等について報告し、教科書発行者による拡大教科書の概要をまとめている。

第2章は、本研究をより現状に即した実質的研究とするために、教科書発行者へのヒアリング及びアンケート調査を行った結果をまとめた。主に平成 24年度の新課程における中学校教科書を発行する教科書発行者13社を調査対象とし、教科書発行者のDTP体制や拡大教科書に対する取り組みについての調 査結果である。

第3章は、原本教科書のレイアウト構造について調査した結果をまとめている。そもそも教科書とはどのような情報構造で作成 されているのか、各教 科の特性はいかなるものなのかなどを分析することにより、拡大する際のポイントや注意点などを明確化するための基盤研究として行った。昨年度の研究では、 国語、算数、理科に関して研究を行ったが、今年度は主要な科目の検証として英語、社会に関して調査を深めている。各科目の教科書の文章構造とレイアウトの 特徴を分析し、どのように拡大教科書として再構築するのか傾向を検証する。

第4章は、原本教科書DTPデータから効率的に拡大教科書を作 成するための具体的な方法について検証する。昨年度の研究で、文字組版、図・写真 の拡大、拡大教科書のレイアウト、ページ構成など具体的に拡大教科書を作成するプロセスと問題点の抽出を行った。本研究では、昨年度の研究に含まれていな い科目の検証やそれぞれの解決方法に関するさらなる検証として、誤変換やオーバーフローなど文字組版編集時の不具合原因の明確化、ページ特性による拡大方 法等を検討した。さらに昨年度の研究結果と合わせ、DTPデータを使用した拡大教科書の効率的な作成方法などの研究についてのまとめを行った。

第5章は、DTPデータからの拡大教科書に関する概念をさらに発展させながら、一元化された原本教科書DTPデータに含まれる教科書の情報を構 造化することを検証する。各種拡大教科書やオーダーメイドの拡大教科書の作成、テキストの抽出、図・写真等の抽出、将来的には電子書籍へのデータ変換を想 定し、これらの作業を効率よく行うことが可能な[汎用性のある教科書データ]の構築を想定している。その位置づけ、仕様や作成方法に関しての成果をまとめ る。

おわりに本研究すべてを総括し、今後の展望と課題について述べる。

また、本報告書は、昨年度の研究を継続した内容としてまとめているため、昨年度の報告書に記した内容は概要を簡略化しまとめた形で掲載している。詳細は、昨年度の報告書を参照願いたい。

昨年度の報告書のWEBサイト
標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究
「拡大教科書の効率的な作成方法について」報告書
http://md.aichi-fam-u.ac.jp/~siba3/kyoukasho/