目次

第1部 拠点形成事業 「現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究~サマルカンド紙の復興を中心に~」 研究報告 (10:00-11:45)

Report on JSPS Core-to-Core Program: The research on the contemporary culture of “handmade paper and artistic expression” Focusing on the revival of Samarkand paper

 

1 ウズベキスタンとサマルカンド紙(ウズベクの調査研究の紹介、共同研究の報告)

・『世界の紙の伝播とサマルカンド紙』 … 柴崎幸次(愛知県立芸術大学) 

 

・『サマルカンド紙の復元試作』 … 浦野友理(同大学非常勤講師)

 

・『海外調査報告―ミニアチュールを中心に』 … 鈴木美賀子(同大学非常勤講師)

 

・『イスラーム写本の修復』 … 大柳陽一(同大学非常勤講師)

 

2 アジアの紙の現状

・『中国の手漉き紙の現状』 … 周 思昊(大連民族大学・大連)

 

・『朝鮮王朝実録と韓国の紙工芸』 … 朴允美(檀国大学校・ソウル)

 

3 研究の展開

・『ディープラーニングによる紙質調査』  … 神谷直希(愛知県立大学)、柴崎幸次

 

第2部 ウズベキスタンのサマルカンド紙、イスラーム写本、ミニアチュールを知る (13:00−15:50)

Research into ancient Samarkand paper, Islamic Manuscripts, and Miniatures

1 拠点校・ウズベキスタン芸術大学による報告

・『ウズベキスタンのミニアチュール:起源と復活』 … ベグゾット・ハジメトフ(同大学・タシケント)

ミニアチュールのルーツは、古代から中世にかけて形成された、アフロシアブ(古代サマルカンド)など、現在のウズベキスタンの地域で古代芸術として高度に発展した壁画などにある。やがて14世紀後半からのアミール・ティムール時代以降、15世紀の後半から16世紀の初めにかけて読書と美術が盛んになり、ヘラートの偉大な詩人アリ・シール・ナヴァイ(Ali-Shir Nava’i)の時代には、多くの優れた書家や芸術家がおり、その中でも偉大な画家カモルディン・ベクゾッド(Kamal al-Din Bihzad)とその系譜の画家が重要な役割を果たしている。

19世紀半ばには、ほとんど姿を消した中央アジアミニアチュールは、1970年代以降、偉大なる画家の伝統技法にもとずいてウズベキスタンで復元された。これまで、多くの現代アーティストが高品質のミニアチュールを制作しており、その現状を紹介する。またウズベキスタンの現代美術と応用美術に対する社会での影響、産業の発展、ミニアチュールの伝統を保存する上での役割と重要性についても解説する。

  

・『中央アジアの紙』 … ミルハミッド・サビロフ(同大学・タシケント)

105年、中国の蔡倫により紙が発明され、8世紀後半には、西方へは最初の紙工房がサマルカンドに建設された。その後、製紙技術はアラブの地に広がり、アッバース朝のカリフハールーン・アッラシード(776-809)の時代には、バグダッドはアラビア諸国の紙生産の拠点となっていた。

当時のサマルカンド紙は両面書写が可能で高品質でしっかりしており、近隣諸国に輸出されていた。13世紀半ばには、ブハラではシルクとシルクペーパーの生産を開始したといわれている。15~16世紀ティムール朝時代以降の期間に生産された紙の品質は高く、そこに描かれた絵画の技法は、現在まで写本やミニアチュールの技術として引き継がれている。またサマルカンド紙の種類は、「スルタン(Sultan)紙」、「イパック(Ipak)紙」、「ニムカノプ(Nimkanop)紙」、「ミライブラヒム(Mir Ibrahim)紙」があった。最後の紙には、コインサイズの形をした透かしが入っているものがある。

やがて、19世紀に工房が跡絶えたサマルカンド紙は、ブハラ紙とコーカンド紙に置き換えられ、この紙は古い布を由来として作られている。コーカンドのペーパーマスターは、エンジュ(Sophora japonica)の花を使用して黄色に着色した。さらに、紙繊維の粘着性を高めるために、エレムルス(Eremulus)の植物を混在させたといわれる。しかし、安価な機械製紙の白紙との競争に破れ、最後のコーカンド紙の紙工房は1924年に閉鎖された。

 

  

2 ウズベキスタンの研究機関によるイスラームミニアチュールの紹介

・『アブ・レイハン・アルビルニ研究所の写本』 … シャリフジョン・イスラモフ(科学アカデミー東洋学研究所・タシケント)
・『カモルドン・ベグゾットと中央アジアのミニアチュール』 … グルアブザ・カルシエヴァ(芸術アカデミーミニアチュール美術館・タシケント)

ウズベキスタン芸術アカデミーのミニアチュール博物館は、カモルディン・ベクゾッドと彼の弟子の絵画遺産を中心に研究し、外国の博物館や図書館に保管されている作品の精巧な復元絵画を製作または収集し展示している。それは、カリグラフィーやミニアチュールなどの絵画の芸術を知り、断絶したサマルカンドやブハラのミニアチュール工房について研究することである。

カモルディン・ベクゾッドは、アリ・シール・ナヴァイ(Ali-Shir Nava’i)の支援を受け、芸術家として独自のスタイルを創り出し技術を高めていった。後に、サマルカンド、ヘラート、バグダッド、タブリーズ、シラーズの創造的なミニアチュール工房をひらき、その弟子達に成果を与えていった。このスタイルは、ヘラートなどの学校だけでなく、すべての東洋のミニチュア学校にも大きな影響を与えた。

中世のティムール朝の宮殿で働いていた多くの芸術家の中で、カモルディン・ベクゾッドだけが“Asr nadir”(世紀の画家、画家の長)、“Moniyi soniy”(2番目のモニー)などと呼ばれた。その後も、彼が宮殿で働くための条件を整え、彼をアーティストとして扱い最も有名な画家して知られている。

 

・『写本芸術の伝統的な継承』 … シャマフムット・ムハメッドジャノフ(画家・ミニアチュール研究者・タシケント)

3 ウズベキスタンの研究機関によるイスラーム写本、サマルカンド紙の紹介

・『サマルカンド大学の写本ファンド』 … ムハンマディホン・ブズルコフ(サマルカンド大学・サマルカンド)
・『国際イスラムアカデミーの写本調査活動』 … マハマドシディック・ウスマノフ(国際イスラーム大学・タシケント)
・『ウズベキスタンの文化遺産(写本について)』 … シュフラット・プラトフ(ウズベキスタン国立図書館・タシケント)

古代から、現ウズベキスタンの地域は中央アジアだけでなく世界文化の発展に大きく貢献した科学、文化、芸術の中心地の一つであると考えられている。この地域の文明の最も輝かしい遺産は本の文化であり、多くの手書きの本、原稿、歴史的文書がウズベキスタンに集中し残されている。

これらの本は、文明のレベル、特定の歴史的期間、地理的領域、民族、および国家における科学、文化、芸術の発展を明確に表している。同時にそれらは世界の文化遺産であり審美的価値の高い芸術でもある。

講演では、ウズベキスタンの最も重要な写本コレクションと、そのコレクションの中から学者、研究者、歴史、希少な収集家の間で非常に興味深い写本を紹介する。また、現ウズベキスタン領内や周辺で製作された、歴史家、研究者、美術史家の研究に値する重要なコレクション、例えば歴史的出来事、外交関係、科学者や思想家の移動、軍事作戦など、我々の文化的遺産として認められたコレクションも紹介する。

  

第3部 エルミタージュ美術館の紙と芸術表現 招待講演 (※ロシア語から日本語逐次通訳) (16:00−17:30)

Invited lectures: papers and artistic expression of the Hermitage Museum

・『ニザーミーのハムセのミニアチュール』 … アダモワ・アデル(シニア・リサーチャー、エルミタージュ美術館・サンクトペテルブルク)

・同美術館所蔵のニザーミーの叙事詩「ハムセ」の挿絵ミニアチュールと物語を主に解説

・『エルミタージュ美術館の紙の調査』 … ミコライチェック・エレーナ(シニア・サイエンティスト、同美術館)

・同美術館で行われている紙の調査や分析など、様々な作品における事例の紹介    

講演通訳:

イゴリ・サヴェリエフ(名古屋大学)、今村栄一(名古屋大学タシケント事務所)、ムノジャット・ウマロヴァ(ウズベキスタン世界言語大学)

レセプションパーティ:1階CALEアゴラ(18:00から) 参加は有料(1000円)です。参加費は当日現地でお支払ください。

本セミナーに関する、柴崎研究室へのお問い合わせ。