研究拠点形成事業

「現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究

〜サマルカンド紙の復興を中心に〜」中間報告

Interim report : JSPS Core-to-Core Program:  

The research on the contemporary culture of “handmade paper and artistic expression” : Focusing on the revival of Samarkand paper.

 

柴崎幸次 本田光子 佐藤直樹 阪野智啓

鈴木美賀子 浦野友理 大柳陽一 岩田明子

Koji SHIBAZAKI, Mitsuko HONDA, Naoki SATO, Tomohiro BANNO,

Mikako SUZUKI , Yuri URANO, Yoichi OHYANAGI, Akiko IWATA,

 

    “Paper” has repeatedly developed, exchanged, diversified as an important medium in the fundamental cultural formation of mankind. However, the “handmade paper” culture that has been transmitted since ancient times tends to decline globally, and these are due to changes in demand such as economic efficiency of mass production era and modernization of life itself. For example, the Samarkand paper in Uzbekistan is said to be the most beautiful paper in the world for Calligraphy (documents) and miniature (Miniature) written by a pen, but it has ceased about 200 years ago. Also, despite the fact that Japanese paper also gained international recognition as a UNESCO World Cultural Heritage site, the trend of decline continues, there are many problems such as the lack of successors and the decrease in the number of workers . 

   This research, with regard to research, revival and resuscitation as a theme “hand-made paper” culture and “artistic expression” at the University of Arts in Uzbekistan, Japan, China and Korea. We are aiming at the formation of arts and cultural bases to accomplish activities to develop papers and techniques that can be applied to preservation and restoration of arts, products and cultural properties by collaborating with the University of Arts.

 

はじめに

 本報告は、研究拠点形成事業B.アジア・アフリカ学術基盤形成型「現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究〜サマルカンド紙の復興を中心に〜」(実施期間:平成29年4月1日~平成32年3月31日)の概要、計画、これまでの活動などを中間報告(平成30年9月まで)としてまとめ、内外様々な関係者からの教示を仰ぐものである。

 研究拠点形成事業は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)により、日本を中心に先端的かつ国際的に重要と認められる研究課題、または地域における諸課題解決に資する研究課題について、日本と世界各国の研究教育拠点機関をつなぐ持続的な協力関係を確立することにより、地域における中核的な研究交流拠点の構築と若手研究者の育成を目的として実施されている。本学では、実施組織代表者として学長、松村公嗣(平成29年度)および白木彰(平成30年度)、コーディネーターとして柴崎幸次が務め、研究グループを組織している。

図2、世界の紙の伝播とサマルカンド紙の関連図

1.研究課題について

1-1. 研究概要

 本研究は、“手漉き紙と芸術表現”をテーマに、主にアジア圏の手漉き紙文化をもとに、美術やプロダクト、文化財保存修復に応用できる製紙と技法を調査するため、複数の芸術大学間の連携を図り芸術・文化拠点の形成を目指すものである。ウズベキスタンのサマルカンド紙の復興を軸に、紙の道すなわちアジアを結ぶペーパーロードを再生すべく、日本側のリーダーシップのもと中国、韓国との協働により計画を実施する。

  “紙”は、人類の根源的な文化形成における重要なメディアとして発展と交流、多様化を繰り返してきた。しかし、古来から伝わる“手漉き紙”文化は世界的に衰退傾向にあり、それらは大量生産時代の経済活動や生活そのものの近代化など需要の変化によるものである。例えばウズベキスタンのサマルカンド紙は、硬筆によるカリグラフィー(書)やミニアチュール(細密画)の支持体として世界で最も美しいとかつて言われた紙であるが、その製紙技法は約200年前に途絶えている。また、日本の和紙もユネスコの世界文化遺産として国際的な評価を得ているにもかかわらず、現在も衰退が続き、後継者不足、従事者数の減少に多くの問題を抱えている。

 一方、紙の歴史や伝播の上では、本研究での拠点形成を目指すアジアの国々は、過去1300年来 “紙の道”として強いつながりを持つ関係にある。近代以前の紙の製法は人力と自然力によるもので、そこには地域性・歴史性を象徴する多くの文化の跡が潜んでおり、様々な情報を読み解くことができる。また紙に書(描)かれた文字や図、絵画などの表現は、文化、経済、宗教など様々な目的における情報伝達の役割を果たしてきた。

 この“手漉き紙と芸術表現”の課題を芸術大学の連携により研究することは、国際的な芸術の分野において地域性と時間軸を縦横に結ぶ、文化を融和させる取り組みである。単なる伝統的な紙や技法の復元にとどまらず、保存修復の文化事業や新素材の開発、新しい芸術活動への応用など新たな技術や概念を形成し、現代のニーズに向き合うメディアとプロダクトを生み出すための研究交流の場を実現することが期待される。現代における“手漉き紙と芸術表現”の意味を再定義し、各国の相互交流による独自性と多様性の表出と、その成果を還元した地域文化の醸成を目標としている[図1]。

図1、研究拠点形成事業、概念図

1-2. 研究組織、拠点校について

 本研究は、日本が中心となり、ウズベキスタン、中国、韓国の芸術大学が連携している。日本側実施組織は、拠点機関愛知県立芸術大学を中心とし、コーディネーターは美術学部デザイン専攻教授の柴崎幸次が務める。研究グループには同専攻准教授佐藤直樹、芸術学専攻准教授本田光子、日本画専攻准教授阪野智啓、非常勤講師大柳陽一(紙研究者)、同鈴木美香子(日本画家)、同浦野友理(和紙製作者)、同岩田明子(日本画家)が参加している。国内の他の研究協力機関には愛知県立大学、豊田市和紙のふるさとがあり、ウズベキスタンでの活動は名古屋大学ウズベキスタン事務所(副所長エルムロドフ・エルドルジョン、今村栄一)が本研究に協力している。

 相手国側実施組織として、(1)ウズベキスタンは、ウズベキスタン芸術大学(National Institute of Fine Art and Design named after Kamoliddin Bekhzod)が参加し、コーディネーターは、国際交流部長のFazilat KODIROVAが行っている。また平成30年度以降、協力機関としてサマルカンド大学(Samarkand State University)、ウズベキスタン国際イスラムアカデミー(The International Islamic Academy of Uzbekistan)、ウズベキスタン科学アカデミー(Uzbekistan Academy of Sciences)が参加している。(2)中国は、大連民族大学(Dalian Nationalities University)が参加し、コーディネーターは、馬 春東教授が行い、(3)韓国は、檀国大学校(Dankook University)が参加し、コーディネーターは、朴允美准教授が行っている。

 

1-3. 共同研究、セミナーについて

 研究事業は、共同研究とセミナーの実施により構成されている。共同研究として、R-1サマルカンド紙に関する調査、R-2中国紙に関する調査、R-3韓国紙に関する調査、R-4サマルカンドから伝播した洋紙文化の調査を実施する。セミナーは、平成29年度はウズベキスタン、30年度は中国、31年度は日本での開催を予定している。

これまでのところ、S-1ウズベキスタンセミナーを平成30年2月21日~2月22日(2日間)ウズベキスタン芸術大学において開催した。さらに、平成29年から30年にかけて行なった共同研究R-1からR-4で得た結果をもとに、「紙の伝播と多様性」をテーマに平成30年秋にS-2セミナーを大連民族大学にて開催予定である。

 

2.サマルカンド紙について

2-1. 手漉き紙と芸術表現の観点から

 “紙と芸術表現”という観点から製紙技術の歴史を見ると、東方へは中国で技術改良された製紙法が広く伝播し、植物靱皮による原料の探求や用途に合わせた紙の加工(滲み止め)方法など、そこに書(描)かれる表現とともに発展し文化の礎を築いてきた。時代ごとの宗教・政治・経済のありさまにしたがい、文字や絵を用いる多様な表現が存在する。日本の和紙も1300年の歴史を持ち、正倉院文書や平安時代の料紙から、浮世絵版画、ジャポニズムの時代まで、芸術表現と一体化した多様な紙の文化があり、その特性が研究されている。

一方西方へは、タラス河畔の戦い(751年)以降、それまで中国で秘匿されていた製紙技術が捕虜を通じてサマルカンド(現在ウズベキスタンの一都市)へと伝わり、サマルカンド紙が生み出されたという。サマルカンド経由の製紙法は500年の時を経て西洋に伝播し、初期の西洋紙ではリネンやコットンの古布を使用して作られた。後の活版印刷術でその需要が広がり、やがて木材パルプなどを使った近代製紙の技術へと発展した。こうした歴史的経緯から、サマルカンド紙は西洋紙文化の原点とも言える存在である。

 そして中央アジアの美術においては、特にティムール朝時代の書写や細密画の描画技法と紙との関係も重要である。本研究では、サマルカンド紙とイスラム美術の関係性にも注目したい。

 

2-2. サマルカンド紙の歴史および原料についての先行研究

 サマルカンド紙は上述の通り、8世紀後半、唐から伝播した製紙技術をもとに、サマルカンド周辺で作られた紙である。イスラム世界において、コーランや精細な描画・金彩を伴う細密画(ミニアチュール)の支持体として発展してきた紙である[写真1]。東洋の書画文化が毛筆を用いるのに対し、サマルカンド紙はそれまで使われてきた動物資源による羊皮紙などの代替品として、コーランなど硬筆によるカリグラフィーや細密画の支持体として進化した。その特徴は、両面書写できるように澱粉などを塗布し磨きあげた点にある。しかし19世紀には最後の工房がなくなり製紙法は伝わらずに途絶えてしまう。現在では製法や原料など不明な点が多く、サマルカンド紙そのものの明らかな定義付けもなされてこなかった。

 サマルカンド紙に関する先行研究のうち、現時点で入手できたものは以下の通りである。なおウズベキスタン語およびロシア語文献の調査は十分とは言えず、継続中である。

オーストリア、ウィーンのパピルスと古紙の収集で著名なライナー・コレクションを、主に文献面から調査したヨセフ・フォン・カラバチェックは単行書Arab Paper(1887年)[註1]の中でサマルカンド紙に一章を割き、サマルカンドを含むホラーサーン地方は綿花の産地だったものの、サマルカンド紙の原料は着古した亜麻布の繊維であったと指摘する。綿から作られた紙は吸水性が高く滲み止めが必須であるにも関わらず、同コレクション中最古のイスラム紙には滲み止め処理がなされていないという。合わせて、アラブ世界で伝えられてきた、綿由来の紙から麻の紙へ移行したという伝承を否定する。

 紙の歴史について東西に目配りした重要な著作には、ダード・ハンター『古代製紙の歴史と技術』(1943年)[註2]、桑原隲蔵「紙の歴史」(1968年)[註3]があり、いずれも製紙法の西方への伝播中継地としてのサマルカンドに注目する。後者はペルシャ語・アラビア語で紙を表わすKaghaz(kagaz)が中国語の穀紙を意味するKuchih(古音Kok-dz)の訛りに由来することから、当初捕虜の伝えた紙の原料を樹皮と推測する。また桑原氏はライナー・コレクションの顕微鏡による科学調査を行なったWiesner氏の業績を紹介する(原典未見)。すなわち中国新疆地方の古文書には桑などの樹皮が用いられながら8世紀後半のサマルカンド紙には古布が使用されていることから、中央アジアでは桑木の欠乏のため麻布を紙の原料に活かしたとの考察である。

 近年では科学調査の手法が発展し、原料や技法に関する調査報告が相次いでいる[註4]。日本の龍谷大学所蔵大谷コレクションの中央アジア古文書用紙の解析によると(2010年)[註5]、中央アジアの紙の原料には古布を由来とする麻が確認されているという。

 以上から、サマルカンド紙はおおよそ麻布を原料としたものと意見の一致を見るようだが、ウズベキスタン国内では少し様相が異なる。ウズベキスタン科学アカデミー東洋学研究所のマリノフ・サリモフ氏は“The treasury of oriental manuscripts”(2012年)[註6]においてサマルカンドと周辺域の製紙についてまとめた中で、古代から17世紀までのサマルカンド紙の原料を絹、絹と大麻の混合、綿の三種類であると述べる(ただし平成30年2月19日東洋大学において我々がサリモフ氏と討議した折には、サマルカンド紙の原料を綿花・桑・楮の混合であると述べている)。

 またユネスコ(UNESCO)や国際協力機構(JICA)の資金によって、サマルカンド紙の復元を目指して2000年頃に設立されたコニギルメロス工房(サマルカンド郊外)では、桑を原料とした植物靱皮の紙を制作している。これはサマルカンド紙を桑紙とする伝承に基づく復元と推察される[写真2]。

もとより旧ソ連の研究者にもP.I.Pashino(1868)をはじめ歴史研究の一端としてサマルカンド紙の記述は存在するが[註7]、サマルカンド紙の全体像を解明するには断片的だった。

写真1
写真1、コーランや精細な細密画(ミニアチュール)の支持体とされてきたサマルカンド紙。上質の紙は、磨き上げられた艶がある。
写真2、サマルカンドのコニギルメロス工房。桑を原料とした植物靱皮の紙を現在漉いている。

 


2-3
.サマルカンド紙研究の課題

前項で概観したとおり、西欧や日本での調査研究と、サマルカンド国内での研究や認識には不一致が見られるが、このことは必ずしも前者の知見が有力であることを意味しない。桑原隲蔵があらかじめ指摘していたように、これまで科学調査にかけられたサマルカンド紙のサンプル数は十分とは言えず、またロシア(旧ソ連)とウズベキスタンの研究成果は西欧側にあまり紹介されていない。より多くの試料を集め検査することと、学術交流を深めることが重要であり、本事業の意義もまたここにある。

ウズベキスタンには紙の専門家が複数活動しているが、現地でうかがうところによるとサマルカンド紙研究の蓄積が互いに十分共有されているとは言い難い。とりわけ科学調査は、対象とする時代も地域も限られた範囲内で行われてきているようで、器具の整備や経費、技術や手間など課題が多く、紙の歴史を俯瞰的に解明するための適切な量の調査が行えなかったと推察される。

また、紙の主な生産地としてウズベキスタン国内ではサマルカンド、ブハラ、コーカンドなどが知られているが、当然ながらウズベキスタン単独で製紙の歴史的な系譜を辿ることは難しく、周辺の国・地域との関連性を確認しながら調査をすすめる必要がある。

加えて、ウズベキスタン国内の問題として、現在でもコニギルメロス工房が桑を原料にサマルカンド紙を復元制作しているように伝承を重んじる点や、高いレベルの優れた美術品が様々な経緯から国外に流出してしまった点、そのためかつてウズベキスタンで制作された質の高い細密画に対する認知度が低い点が挙げられる。芸術的価値の高い写本等については海外の美術館・博物館とともに、ウズベキスタン国内の非公開コレクションを含め体系的に調査し、概要を把握したい。

そもそもウズベキスタンに限らず、写本の調査研究は、主に書かれた内容の解読と分析が重視され、支持体である紙の原料や性質、製紙技術などはほとんど注目されてこなかった。しかし、18世紀頃に機械製紙が流通するまで、世界のさまざまな地域で作られた手漉き紙は“人と自然の力”でできており、風土気候、植生や物流を含めた地域的特性と書画技法とは関連している。原料(繊維)や製法、紙の加工などに様々な特徴がある手漉き紙に焦点をあて、“手漉き紙と芸術表現”という紙と表現技法の相関を探る本研究は、写本研究にも新たな視野をひらくものである。

 

3.研究実施の概要

3-1.サマルカンド紙の調査について

 共同研究では、R-1サマルカンド紙に関する調査を重点的に実施している。平成30年2月のS-1ウズベキスタンセミナーでは、“サマルカンド紙の定義”について議論を開始した。現在のウズベキスタン内でのサマルカンド紙の認識は、“約1200年前に中国から伝播した、サマルカンドの紙工房の伝統にもとづく紙”ということになる。

 準備段階における調査にて、古い写本の閲覧や情報収集を行う中で入手した18世紀のサマルカンド紙の紙質調査[写真3]をしたところ、原料は綿(コットン)であった。前項2-2にまとめたようにサマルカンド紙の原料とされてきた桑や亜麻(リネン)と食い違う結果となった。よってサマルカンド紙の実態には解明するべき点が多く、より広範囲かつ詳細な調査が不可欠であることが判明した。

 本研究における方法は二段階からなる。

まず[1次調査]として年代の判明するコーランなどの写本紙を目視観察するとともに、携帯型顕微鏡カメラにより撮影を行い、できるだけ多くの紙の繊維の画像を収集する[写真4]。

続いて[2次調査]として、特徴のある繊維の紙は、原本を破壊しないよう留意しつつ、すでに破損し自然に崩落した紙の部分から繊維を抜き取ることで紙片を採集し、科学調査により繊維特性や混入物を分析し、紙の原料を特定する[写真5]。

 この方法の長所は、短時間で大量のサンプル収集を可能とする点にある。従来の顕微鏡を用いる観察・分析方法に対し、最新の携帯型顕微鏡カメラを用いることで、繊維の状態を確認できる高い拡大率と高画質のデジタルデータを一瞬で撮影し、インターネットを介して離れた場所とも共有することが可能となった。このため、さらに精密な科学分析にかけるサンプル数をなるべく抑えることができる。もとより繊維の抜き取りの難しい重要な作例についても、表面の撮影が可能であれば、収集した多量の画像の中から類似した繊維を見つけることができ、そこから年代や紙の性質を他の事例調査と照合し、将来的には推測することも可能になると考えている。サマルカンド紙はコーランやその解説書など宗教に関連する写本に用いられてきたため現在まで数多く残っており、制作年の記載があるものも多く、年代を特定することができる事例が比較的多いからである。

 対象とする紙(紙片)は18世紀から古くは12世紀以前の文化財であり、サンプル採取のためには所蔵先期間と本学とで研究協定を結ぶなど、特別な許可を得ることが必須である。そこで、ウズベキスタン大使館の協力を得ながら研究協力体制の増強を目指しており、早速平成30年5月にタシケントにて、古い写本の紙片や繊維の提供を呼びかける会議を開催した。これにより協力機関としてサマルカンド大学、ウズベキスタン国際イスラムアカデミー、ウズベキスタン科学アカデミーが参加した。今後さらに、タシケント国立図書館、ウズベキスタン芸術アカデミーとも新たに研究交流協定を締結する予定である。こうして今後の調査を進めるための土台を着実に築くことができている[写真6]。

写真3、18世紀のサマルカンド紙(上)の紙質調査では繊維に原料は綿(コットン)でありフェブリル化が見られる。桑によるコニギルメロス工房の紙(下)は、比較的繊維が縮れることなく絡み合っている。

写真4、年代のわかるコーランなどの写本紙を目視観察と携帯型顕微鏡カメラにより撮影する。右は写本の年代を読み取れる部分。

写真5、繊維の抜き取りなど、科学的な分析により、繊維特性、混入物を分析し紙の原料を特定する。写真は高知県立紙産業技術センター 有吉正明氏が提供。

写真6、ウズベキスタン科学アカデミー(左)、サマルカンド大学(右)とのMOU研究交流協定を締結。

 

 

3-2.サマルカンド紙の試作について

 サマルカンド紙復元のため、原料と工程を変えて試作に取り組んでいる。原料が桑などの植物靭皮であるか、それとも麻・綿など布を由来とした紙であるか、またサマルカンド紙の重要な特徴である紙面の平滑さを作り出すため、塗布する澱粉質の材料や磨く工程に関しても研究が必要である。

原料は、コニギルメロス工房が使用している桑繊維、先行研究で指摘されている麻繊維、今回の調査により見つかった綿繊維を用いることとした。

 現在は第一次の試作として、ウズベキスタンの桑を原料に製紙を行い、塗布する澱粉質の材料や研磨の方法を変え継続的に実験をしている。具体的な製法は、コニギルメロス工房やタシケントの細密画家ニョズザリ・ホルマトフ氏の研究を参考にした[写真7]。①桑の木を剥ぐ、②水で煮て黒皮を剥ぐ、③灰汁で煮る(8時間)、④丸太等で叩解、⑤紙漉をする。基本は振らない、⑥板に貼り付ける。剥がれたら乾燥、⑦米粉を溶いて煮たノリ(澱粉)を塗り、乾燥させる。⑧表面を平滑な大理石などで一方向に磨いていく。

第二次の試作として、パルプ化された麻繊維を用いて製紙実験を進めている。

 今後は布由来の麻や綿繊維の紙を制作する。そのため布を砕き原料とする工程に必要なホーレンダービーターを導入する予定である。大型機器の購入により研究の活性化をはかり、併せて研究体制の構築を計画している。

写真7、細密画家ニョズザリ・ホルマトフ氏のサマルカンド紙の研究。簀、桑の木、使用する米澱粉。

3-3.その他、研究者交流

 研究者交流としては、平成29年6月にはウズベキスタン側研究者を日本に招聘しキックオフミーティングを行い、ウズベキスタンでの博物館の閲覧、文化遺産の閲覧方法について協議し、具体的な調査計画を立案した[写真8]。

写真8、平成29年6月、ウズベキスタン芸術大学研究者を日本に招聘しキックオフミーティングを実施した。

 

4,活動報告(平成29年度から30年度9月まで)

4-1.サマルカンド紙に関する調査

 研究の内容と進捗状況は、前項3研究実施の概要にて詳述した通りである。

 

4-1-1.[基礎調査]日本国内におけるウズベキスタン及び中央アジアの手漉き紙文化の情報収集

(1)平成29年3月、東京国立博物館、高橋裕次氏(保存修復課)木下史青氏(デザイン室長)に国内に所蔵される中央アジアの紙資料に関してヒアリングを実施した。【柴崎】(以下、担当者・参加者を【】で示す)

(2)平成29年4月、東京大学(東洋文化研究所)桝屋友子教授にイスラム美術の細密画に関してヒアリングを実施した。また、研究方法に関して協議を行った。【柴崎、鈴木】

(3)平成29年4月、首都大学東京(牧野標本館)、村上哲明教授に依頼し、和紙のシーボルトコレクションに関して調査、紙の撮影を行った。【柴崎、鈴木】(関連WEBサイト、http://labo.a-mz.com/wasi/siebold.html)

(4)平成29年5月、国立民族学博物館情報管理施設にて、中央アジア・東南アジアのコーランやサンスクリット写本など古紙資料104点の調査を行った。【柴崎、浦野】(関連WEBサイト、http://labo.a-mz.com/paper/sample170523.html)

(5)平成29年5月、JICAにおける先行研究関係者、金刺潤平氏(水俣市)へ、コニギルメロス工房の活動に関してヒアリングを実施した。【柴崎、本田、浦野】(関連WEBサイト、http://labo.a-mz.com/paper/samarkand20170502.html)

 

4-1-2.ウズベキスタンでの調査、セミナーの開催、協議等

(1)平成29年11月[共同研究R-1]ウズベキスタン芸術大学との合同調査。ウズベキスタン(タシケント、サマルカンド)にて。[写真9]【柴崎、本田、鈴木、佐藤、浦野】

 サマルカンド紙に関する調査(写本・ミニアチュール調査)タシケント・イスラムアカデミー、サマルカンド大学、タシケント国立図書館、コニギルメロス工房、アムール・ティムール財団、サマルカンド博物館を訪問調査した。サマルカンド紙の所在について調査し、その場で許可が下りたものに関しては携帯型顕微鏡カメラ撮影を行った。

写真9、[共同研究R-1]サマルカンド紙に関する調査。タシケント・ウズベキスタン芸術大学・イスラムアカデミー、サマルカンド大学、タシケント国立図書館、コニギルメロス工房、アムール・ティムール財団、サマルカンド博物館

(2)平成30年2月[セミナーS-1、国際交流展、共同研究R-1]ウズベキスタンセミナーの開催および調査研究。ウズベキスタン(タシケント、サマルカンド)にて。【柴崎、本田、鈴木、兪期天(上越教育大学)、冨樫朗(豊田市和紙のふるさと館長)、周思昊(大連民族大学)、金青松(同)、朴】

 S-1ウズベキスタンセミナーを2月21日から22日(2日間)実施した。国際交流展、講演・報告の実施に合わせ、サマルカンド紙の解明に関する議論を行った。参加者は約60名。

 講演は、①柴崎幸次「現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究 〜サマルカンド紙の復興を中心に〜」、②冨樫朗「和紙の歴史」、③朴允美「朝鮮王朝実録の複製本制作」 を実施した[写真10]。

 国際交流展の展示参加は、柴崎、佐藤、浦野、鈴木、阪野、兪、朴、周、金、NIFAD大学の教授の作品で実施した。さらに日本側で編集した日本の和紙の製本、韓国の李朝時代文書の復元などを展示した[写真11]。同時に行った調査研究では、タシケント・イスラムアカデミーより紙片サンプルの10点の提供を受けた。(関連WEBサイト、http://labo.a-mz.com/paper/uzbekseminar201802.html)

写真10、[セミナーS-1、共同研究R-1]ウズベキスタン芸術大学にて、ウズベキスタンセミナーの開催およびサマルカンドでの調査研究。
写真11、ウズベキスタン芸術大学にて、国際交流展の実施。

(3)平成30年5月[共同研究R-1]調査研究および、“古い写本の紙片や繊維の提供を呼びかける会議”。ウズベキスタン(タシケント、コーカンド、サマルカンド、ブハラ)にて。【柴崎、鈴木、大柳、岩田】

 サマルカンド紙に関する調査(写本・ミニアチュール調査)として、科学アカデミー東洋大学で、古い写本の調査を行った[写真12]。タシケント・イスラムアカデミー、サマルカンド大学、タシケント国立図書館、コーカンド郷土史博物館、ブハラ国立図書館において写本の調査と原料分析用サンプル紙片を入手する[写真13]。また同時に科学アカデミー東洋大学、タシケント・イスラムアカデミー、サマルカンド大学の3校と愛知県立芸術大学による学術交流協定(MOU)を締結した。

 ウズベキスタン芸術大学では、愛知県立芸術大学の指導で紙漉き工房の整備を進めているが、中国で製作した新しい簀桁を提供した。

 5月11日、円卓会議(IBC タシケントホール)において、“古い写本の紙片や繊維の提供を呼びかける会議”を実施した。参加者は28名。また5月14日、S-1ウズベキスタンセミナーをサマルカンド大学にて開催した。講演、報告の実施とサマルカンド紙の解明に関する議論を行った。参加者は約50名。同時に古いイスラム写本の保存・修復方法について日本の和紙を活用する方法を提案し今後の修復方法に関する協議を行った。

 今後ウズベキスタンにおいて、サマルカンド紙の調査を進めるため、携帯型顕微鏡カメラを貸し出して調査協力を委託した。

写真12、タシケント・イスラムアカデミーでの調査風景。
写真13、ブハラ国立図書館での調査風景。

 

4-1-3.[科学調査]サマルカンド紙の紙質分析

(1)平成29年4月から7月、日本澱粉協会の協力を得て、18世紀(以下「世紀」を「c」と記載)のサマルカンド紙2点の紙質分析を行った。

 電子顕微鏡での観察により、表面に糊状物質の存在が確認できた。光学顕微鏡によるヨウ素染色での分析では、表面につやのある紙は赤紫色に染色されたため、モチ種系澱粉質が塗布されている可能性が高いと判明した[写真14]。

写真14、日本澱粉協会の協力による報告書。③の艶のある部分は、繊維上に糊状物質が電子顕微鏡により観察された。ヨウ素染色では、赤紫色に染色されたため、もち種系の澱粉質が塗布されている可能性が高いと推測される。

(2)平成29年5月、高知県紙産業技術センターにてJISP8120「紙、板紙およびパルプ、繊維組成試験方法」による光学顕微鏡写真、100倍、C染色液による染色による撮影を行なった。対象はサマルカンド紙3点(準備調査のサマルカンド紙(18c)の青い繊維部分、ニョズザリ・ホルマトフ氏所有写本(16、17c)、“えほんのもり” (岩倉市)所有写本からの提供)。

  その結果、16cから18cの紙片は、綿繊維であることが判明した。C染色液にて青紫色に変色する不定形物質が観察されたが、特定はできていない。[写真15]。

写真15、16cから18cのサマルカンド紙の紙質調査結果は綿繊維であった。

(3)平成30年2月、高知県紙産業技術センターにて同試験、撮影を行った。対象はサマルカンド紙他9点(タシケント・イスラムアカデミーから協定に基づき提供(17c欧州、13c〜18cサマルカンド4点、18cブハラ2点、18c〜19cコーカンド2点))[写真16]。

   その結果、17c欧州と13cの紙片では麻繊維が検出された。その他はすべて綿繊維。C染色液にて青紫色に変色する不定形物質が観察されたが、特定はできていない。

写真16、サマルカンド紙の紙質分析は、修復の際にでる破損部分や繊維の抜き取りにより実施した。

(4)平成30年5月、高知県紙産業技術センターにて同試験、撮影を行った。対象はサマルカンド紙他10点(タシケント国立図書館2点、サマルカンド大学3点、コーカンド郷土史博物館1点、ブハラ国立図書館4点を協定に基づき提供)。

   その結果、17cから18cの紙片は主に綿繊維、13c〜16cの紙片は麻繊維または綿繊維と不明繊維との混合。麻繊維は繊維長、繊維幅から大麻または亜麻と推察される。不明繊維はC染色液にて青紫色に変色したが、特定はできていない。

 

4-1-4.[試作]サマルカンド紙の試作

(1)平成29年12月〜同30年2月、愛知県立芸術大学和紙工房にて、桑を原料にサマルカンド紙試作実験を行った。また澱粉等の塡料に関する実験と製紙を行った。

(2)平成30年 3月〜5月、和紙工房にて、同実験を行った。ネリ成分など粘剤が使われていなかったことも想定し、桑原料のみ、米澱粉入り、ネリ使用とそれぞれ異なる製紙サンプルを制作した[写真17]。

 今後、これらの試作紙を使用し米粉、小麦粉、卵白などを塗布の上研磨したサンプルの制作を目指す。

写真17、サマルカンド紙の試作。

4-2. 中国紙に関する調査

 大連民族大学との共同研究により、紙の起源からいち早く発展を遂げたと言われる中国紙に焦点をあて、紙と芸術表現を調査する。また、西方への紙伝播に関連する調査研究を行う。

中国を代表する宣紙、竹紙など伝統的な紙の技法を継承する工房を訪ねたほか、主要博物館にて調査を実施した。将来的には、中国の東・西地域における紙の実態を調べ、中国紙の系譜を俯瞰的にまとめることを目指す。

4-2-1. 中国での調査、セミナーの開催、協議等

(1)平成29年6月[共同研究R-2]宣紙に関する調査。中国(大連、小嶺村、上海)にて。【柴崎、本田、周、王玲(大連民族大学)】

 大連民族大学(大連)を訪問し、今後の中国における調査実施計画の具体化を協議した。小嶺村宣紙工場、中国宣紙博物館(安徽省)にて宣紙の製法を調査し、関連資料を収集した[写真18]。旅順博物館(大連)を視察し、上海博物館では展示中の元時代の紙を許可の範囲内で撮影した。

(関連WEBサイト、http://labo.a-mz.com/paper/koreanpaper01.html)

写真18、小嶺村宣紙工場、安徽省宣城宣紙博物館にて宣紙の視察。強力な打ち込みによる公開と断裁により繊維を取り出す。

(2)平成30年6月[共同研究R-2]竹紙に関する調査。中国(杭州、蘇州)にて。【柴崎】

 大連民族大学に企画を依頼し、杭州市富阳区大同村、朱中華氏の竹紙の製作を見学し作業工程を調査した[写真19]。

写真19、杭州市富阳区大同村 朱中華氏の竹紙の作業工程。竹は孟宗竹を使用し、長期間石灰をまぶし浸水させ、腐食の工程を経て煮熟し、機械にて長時間叩解する。

(3)平成30年秋[セミナーS-1、共同研究R-2]S-2中国セミナーを大連民族大学にて開催予定。

 

4-3. 韓国紙に関する調査

 拠点校ある檀国大学校との共同調査により、中国紙と併せて研究する。また、和紙との関係性や韓紙の実態とも照らし合わせ、紙の系譜を俯瞰的にまとめる形で進めていく。韓国ではセミナーは実施しないが、平成30年 12月、愛知県立芸術大学と豊田市との共同研究(本事業経費外)において、手漉き紙と芸術表現をテーマとした「和紙素材の研究展Ⅵ+韓紙」を開催、およびアジア民族造形学会において発表を予定しており、本事業のテーマにおいて国際交流の場を設定している。

4-3-1. 韓国での調査

(1)平成29年5月[共同研究R-3]韓紙に関する調査。韓国(ソウル)にて。【柴崎、兪、朴】

韓国の朝鮮王朝実録の複製本制作事例から、今後の調査実施に関するミーティングを行った。同時に槐山韓紙博物館、ソウル大学の視察を行った。日本側は柴崎、兪を3日間ソウル市へ派遣し、韓国側は朴が実施した。紙の起源からいち早く発展を遂げたと言われる中国及び朝鮮半島の紙に関する研究の範囲や方法などを協議した。また特に、韓国独自の製紙の復元にむけて研究されている“ウェイバル”という方法に関して、韓紙の制作工程を調査した。

 

4-4.サマルカンドから伝播した洋紙文化の調査

 中国を起源としてサマルカンドを中継し、アラブの国々を通じて欧州に伝わった紙文化に焦点をあて、サマルカンド紙と同時代の西洋紙の収集と分析を行う。アラブ世界では、パピルスから紙へ需要が切り替わった時、サマルカンド紙やそれに近い製法の紙を用いたと考えられる。したがって欧州を含む洋紙文化の調査は、サマルカンド紙や紙の伝播の実態を知る上で関連深く重要である。

(1) 平成30年3月、“Exempla 2018 – Cultural Heritage”International Trade Fair Munich招待出品。ドイツ(ミュンヘン)にて。【柴崎、鈴木、浦野】

 欧州で最大規模の手工芸の国際見本市Exempla 2018–特別展Cultural Heritageにおいて“手漉き紙と芸術表現”ブースを出展した。本研究成果の一部資料を公開し、ドイツの紙の研究者にサマルカンドから伝播した洋紙文化の調査についてヒアリングを行った。多くの手工業関係者、研究者の来場があった[写真20]。

写真20、ドイツ・ミュンヘンで7日間開催された手工芸の国際見本市Exempla 2018特別展に招待出展。

(2)平成30年9月[共同研究R-4]サマルカンド紙および洋紙の調査。オーストリア(ウイーン)にて。【柴崎】

 ライナー・コレクション関連施設(パピルス・ミュージアム)を視察し、欧州に紙が伝わったとされる13cに近い紙を調査した。中央アジアからヨーロッパの9〜10c、特に古い紙を選んだ13種類の紙片(繊維)を調査した。先行研究においてカラバチェックがライナー・コレクションの最も古い紙とする、記録媒体がパピルスから紙に切り替わる時のものも含まれている。

(3)平成30年9月[共同研究R-4]サマルカンド紙の調査。ロシア(サンクトペテルブルグ)にて。【柴崎】

 エルミタージュ美術館とサンクトペテルブルグ国立図書館を訪れ、イスラムのミニアチュールなど、写本の所蔵に関するヒアリングと熟覧を実施した。同美術館ではミニアチュール専門のDr Adamoyjl Adel T.氏と、紙分析のDr Mikolaychajk Elena氏を訪問し、所蔵するイスラム写本や絵画の紙、画材の分析を共同で行うことなど、今後の連携に関する協議を行った。また同図書館はペルシャの細密画を含む貴重図書を650冊所蔵する。そのうちサマルカンド、ブハラなどウズベキスタンに関係が深い5冊の熟覧を行った。

 

おわりに

 本報告は3年間の事業の中間報告であり、平成29年4月から平成30年9月までの事業に関しては概ね順調に進捗していると評価できる。研究拠点である愛知県立芸術大学を中心に、ウズベキスタン芸術大学・大連民族大学・檀国大学の間には強固な連携が築かれつつある。サマルカンド紙をはじめ和紙・中国紙・韓紙の調査研究を通して、他機関を含む相互交流を深めており、それによりさらなる研究の進展が促進されている。携帯型顕微鏡カメラと科学調査の併用という紙の調査方法を確立し、サンプル収集と調査・分析に着手している。これまでの調査結果でとりわけ重要なのは、サマルカンド紙の原料に綿(一部に麻)が検出されたことである。先行研究では、麻や桑が挙げられていた。実態をより正確に把握するために、さらに資料数を増す予定でいる。今後の調査先とも協力関係を結びつつあり、研究課題の実現に向けて着実に計画を進めていきたい。本プロジェクトの活動はウズベキスタンのメディアにもたびたび取り上げられており、サマルカンド紙への高い関心をあらためて同国内に呼び起こしている。

本研究はウズベキスタンでの活動に重点を置き、サマルカンド紙の調査と復元を軸に実施しているが、アジアの国々につながる紙の伝播については、その接続性について未だ不明な点も多く、今後も紙の道としての関連性を視野に入れ研究を継続する予定である。現在の日本においては、中央アジア以西の研究としてサマルカンド紙に関する記述は少ないが、本研究を通じてその情報を整理しサマルカンド紙への理解に繋がる活動になればと考えている。

 

[謝辞] 

研究体制の構築やセミナーの開催、調査研究の依頼、公開講座の企画などにおいて本事業に理解を示し、最大限の協力を惜しまない多くの関係者の方々に対し、ここに記して深謝申し上げます。

 

1)Joseph von Karabacek, Arab Paper ,translated by Don Baker and Suzy Dittmar, Archetype Publications, 2001.

2)ダード・ハンター、『古代製紙の歴史と技法』、久米康生訳、勉誠出版、2009年。

3)桑原隲蔵『紙の歴史』、桑原隲蔵全集〈第2巻〉東洋文明史論叢、岩波書店、1968年。

4) Mahgoub et al., Material properties of Islamic paper, Heritage Science, 2016.

5)江南和幸、「大谷コレクション紙資料の科学分析から眺めた中国・中央アジア中世の社会・文化史」『龍谷理工ジャーナル 22(1)』、通号 58、龍谷大学理工学会、2010年、1-10頁。および参考として「紙を巡る東西文化の違い―アジアに残る古文書用紙の分析から(2015,Nov.14改稿)」、東洋文庫 講座「西洋書籍と東洋研究」、2013年、講義録(原題:東伝製紙術と西伝製紙術の違いの起源)

6)Abu Rayhan al-Biruni institute of Oriental Studies, THE TREASURY OF ORIENTAL MANUSCRIPTS, 2012

7)Нозим Хабибуллаев,Из истории письменности и рукописной книги народов Узбекистана, the University of World Economy and Diplomacy(UWED) ,2008.

ハビブラエフ・ノジム、『ウズベク民族のカリグラフィーと手書き書籍の歴史について』、(世界経済外交大学)、2008年(未翻訳)。

[参考文献、資料、WEBなど]

1)マーク・カーランスキー、『紙の世界史:PAPER 歴史に突き動かされた技術」、川副智子訳、徳間書店、2016年。