EXEMPLA 2018 Japanese Washi Art & Designへの出展 2018.03

EXEMPLA 2018 Japanese Washi Art & Design

Aichi University of the Arts, Faculty of Art, Department of Design and Craft

Ⅰ EXEMPLA 2018とは

EXEMPLAは1970年以来、毎年ミュンヘンにおいて、バイエルン手工業連盟の国際工芸品フェアの最大の国際見本市として企画されている。またEXEMPLAは、展示会においてはクラフトやデザインに卓越した技術の仕事を、その場で提示することが最大のコンセプトとしている。

展示会Internationale Handwerksmesseでは毎年テーマが変わり、本年はユネスコ無形文化遺産、その技術・文化・社会的な背景がテーマである。私達も“和紙”、“手漉き紙と芸術表現”をテーマに、EXEMPLAホールB1にて出展をさせて頂いた。

[写真] 私達のサイトは〝Japanese Washi Art & Design〟

 

Ⅱ テーマは、和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術

本展では、ユネスコの世界無形文化遺産は「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」であり、〝和紙〟をテーマにどのような展示に臨むべきか様々な考えを巡らせ、やはり全て、自然の力と、人の力でできる、和紙技術そのものをこのドイツの国際見本市で見てもらおうと考えた。

現代では、和紙や手漉き技術自体が廃れつつあるが、それでも先人の技術の蓄積や交流、その技術の伝達に対して、現在も再評価すべきものであり、それは日本でも欧州でも手仕事を通じて伝わるものは多い。

様々な工芸が、緻密に表現されてこそ、そこに人と物との対話がこの国際見本市では表現されていた。それらが今後のデザインに、いかに繋がっていくのかと言うことを様々な人々に問いかけることがこのメッセの最大の特徴だったと考える。

[写真] 手漉き和紙、森下判、1枚取り

  

[写真] 手打ち叩解、道具類の展示

[写真] 手打ち叩解、紙漉の実演

[写真] 照明と金箔・和紙の作品の展示

[写真] 金箔・和紙作品の展示、実演

 

Ⅲ Japanese Washi Art & Design

私達のサイトは〝Japanese Washi Art & Design〟というタイトルで、全てハンドメイドの和紙を、毎日50枚ほど制作した。紙漉きも、多くのビジターと対話を行い、実際に紙を漉いてもらうなど、体験の通じて様々なコミュニケーションを取ることができた。世界の紙の伝播や、欧州の洋紙文化の漉き方など多くの質問や交流が行われた。

また、展示は日本の和紙をセレクトし製本したものを7冊と、森下紙をはじめ様々な和紙を展示した。さらに暗室の展示コーナーも設け、和紙と照明や截金作品を展示した。

紙漉き以外に、截金や刷箔など、箔を用いたワークショップ、和紙をセレクトして見本カードを作るワークショップなどを実施した。

[写真] 会場ブースの壁面

 [写真] 日本の和紙、製本、7冊

 [写真] 和紙製本を見る人たち

 [写真] 和紙マップ、摺箔のワークショップ

Ⅳ 紙漉の実施

海外の展示会場などで可能な紙漉きでは、叩解から紙漉きまでの実演を見て頂いた。

原料は主に楮を使用し、日本で煮熟を行い天日で乾燥して持ち込んだ。ネリのトロロアオイは収穫後すぐに天日干しし乾燥した状態で持ち込んだ。水に関してヨーロッパの水は硬水なので軟水の水を購入し使用した。全てが初めての経験であった。

はじめに、原料の手打ち叩解を展示会場で披露した。会場内に叩解する音が響き渡る。来場者からは、〝この工程は、手打ちの必要があるのか、機械ではできないのか? これは精神修養としてやっているのか?〟などの質問があった。私達はそれらに対して、〝手打ち叩解であることが、和紙の強さや紙の性能を引き出せること。さらに自分たちの行為が常に違いがある自然の原料を知る行動となること〟など伝えた。

手打ち叩解の流れから漉舟に原料を入れ紙漉を行った。今回準備した漉き舟や美濃型の木槌も自らが設計し手作りである。簀桁のサイズは森下紙に近い1枚取りを使用した。

 

[写真] 来場者に手打ち叩解を体験してもらう

[写真] 来場者に紙漉を体験してもらう

[写真] 道具類も、多くの人々に触れる形で展示

Ⅴ コラボレーション

私達のブースの近くはユネスコ無形文化遺産をテーマにしており、精密な時計制作のグループや、教会建築の修復を研究する実施するグループなど。また藍染のグループ、様々な技法によるジュエリーなど、多くのデザイナーの仕事を見ることができた。

その中で、私達のサイトは、〝和紙を自分たちの仕事に活用したい〟または〝和紙を知りたい〟など。私達も〝いろいろなアイデアで和紙を使って欲しい〟など、いろいろなニーズの中で様々な交流が生まれた。欧州の紙文化と和紙が重なり合うなど、この手漉き紙と芸術表現についての探求は、様々なコミュニケーションの話題として繋がった。

 

[写真] オーストリアのBlaudruckerei, Karl und Maria Wagnerさん。会場で漉いた紙に藍染めをして頂いた。

 

Ⅵ 謝辞

本展は、私達の出展を計画して下さった主催者ミュンヘン手工業会議所(Handwerkskammer für München und Oberbayern)及び関係者の皆様、ミュンヘン在住の浅野樣、衣川様をはじめ、多くの協力者の方々のご厚意で実現できたものです。

本展の構築は、愛知県立芸術大学と豊田市との共同研究及び、拠点形成事業(現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究「和紙、サマルカンド紙に関する調査」)の成果によるものです。ここに感謝の意を表します。

 

  

[写真] 会場の方々にも、紙漉をしてもらいました。

[写真] その他、会場の風景

[写真] その他、会場の風景