文部科学省委託事業 標準規格の拡大教科書等の作成支援のための調査研究 「拡大教科書の効率的な作成方法について」 平成24年2月

目次

4 原本教科書DTPデータを使用した拡大教科書の効率的な作成方法

4.1 昨年度研究のまとめ

昨年度の本研究において、【研究1】としてDTPデータを使用した拡大教科書の作成方法を明確化するとともに、作成時における問題点を抽出して 効率的に作成するための方法を分析した。また、原本教科書DTP データにおける問題点の改善と対応方法のパターンを各要素別に検証した。

具体的には、昨年度の報告書の[4.2 文字組版のポイント][4.3 図・写真等拡大のポイント] [4.4 レイアウトのポイント][4.5 ページ構成のポイント][4.6 原本教科書DTP データから拡大教科書を作成する具体例]においてすでに述べている。

本章では以上をふまえ、追加的事項の調査とソフトウエアの機能アップによる効率化の検証、誤変換やオーバーフロー等を回避する方法についてあら ためて考察した。例えば、本文または関連ファイルの文字情報の“文字化け”など、フォントの誤変換の問題は変換する書体をあらかじめ想定しておくことで回 避できる場合が多い。これは、原本教科書作成時に拡大教科書の設計を視野に入れておくことが効率化につながることを意味している。よって、昨年の検証デー タと合わせながら、拡大作業時の不具合とその原因や対策を一覧にまとめることとする。

4.2 文字組版編集時の不具合(誤変換やオーバーフロー)原因と対策

拡大作業における文字組版の調整には、まず文字の大きさ・書体・字間・行間等の複数の属性を設定し直す作業がある。拡大教科書の作成はゴシック系書体への変更が重要であり、書体変更→文字サイズ変更→それ以外の属性の調整書体、という順番で作業が進められていく。

文字組版編集時の代表的な不具合としては、原本教科書と異なるフォントに変更した際のテキストの“文字化け”、文字サイズ変更時のオーバーフ ローや改行位置のズレなどがある。これらの不具合が多い場合、DTPデータを活用した拡大教科書の作成作業は、修正等に手間がかかるので、大きなコスト アップの要因になっている。

本項では、昨年度の研究結果と合わせて標準的な拡大教科書を作成するプロセスを確認しつつ、 (1)文字組版の調整作業、(2)図・写真等、外部ファイル拡大のポイント、(3)効率化のための留意点・応用などについて、不具合の内容、原因、修正方 法と対策についてまとめを行う。

図43 標準的な拡大教科書を作成するプロセス
図43 標準的な拡大教科書を作成するプロセス

(1)文字組版の調整作業

不具合の内容 原因 修正作業・方法
(a)原本データの書体変更時の“文字化け”

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  • 変更先のフォントに文字コードがない場合。
  • 異字体の指定が解除。
  • 異なる文字がセットされている場合。
  • オリジナルフォント、異体字、旧字体、数式、特殊記号等が制作環境に無い。
  • 市販の外字フォントを使用。
  • 変更先のフォントに文字コードがない、または異なる文字がセットされている。

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  • 異字体の指定が解除され標準書体に置き換わる。
・他の書体に置き換えが必要であり、置き換え後の文字を入力しなおす。

・原本教科書と同じ表示になるように部分的に書体変更が必要となる。

(b)文字サイズ変更時のオーバーフロー、改行位置の問題

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  • テキストがテキストフレーム内に納まりきらない。
  • 本文中に不適切な改行がある。
  • 文字サイズ変更時にはオーバーフローが生じるため、すべての文字情報が表示され適切にレイアウトされるよう確認し、テキストフレームのサイズ調整を行う必要がある。
  • 体裁を整える目的で文中において強制改行したところは文字サイズ拡大時に不要な改行となるので調整する。
  • 公式・記号の表示など字間等の違和感が出ていないか確認し、拡大教科書の表現方針に基づき修正する。
(c)書体による字体デザインの違いの問題

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  • 書体によって字幅が異なり、文字サイズを変更しなくてもオーバーフロー等の問題が生じる場合がある。特にアルファベットや数字、特殊記号は異なる場合が多い。

【対策】

  • オリジナルフォントであっても標準的な書体と互換性のあるものであれば問題はない。
  • 元のフォントと置き換え後のゴシック体フォントですべての同一文字コードに同じ字体がセットされていれば問題は生じにくい。
  • 合成フォントなど複数の書体を組み合わせて作成する疑似書体でも同様である。
  • 書体による文字デザイン文字幅の違いを認識し、変更する書体を選定する必要がある。
  • テキストデータの作成時、標準フォントとの互換性を確認して入力する。

(2)図・写真等、外部ファイル拡大のポイント

不具合の内容 原因 修正作業・方法
(a)外部ファイル等、図中の書体変更時の“文字化け”の問題、文字サイズ変更時のオーバーフロー、改行位置の問題。

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  • Illustratorなどのベクトル画像データ等で図表が作成され、その中にテキストを含んでいる。(文字化けの原因は(1)−b参照)
  • 1 ファイルずつ文字を打ち直し、再編集する。または他の書体に置き換えが必要。
  • 外字など部分的な不具合の場合、原本教科書と同じ表示になるように書体変更が必要。
  • 図表データが多用されファイル数が多い場合、1 ファイルずつ編集を行わなければならない。
(b)書体変更ができない場合

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Illustrator などのベクトルデータ内で図表が作成され、その中の文字情報のテキストが図形化(アウトライン化)されていて、書体やポイント数の変更ができない。

【対策】

  • テキストの図形化は行わない。
  • 外部ファイルは、ベクトル画像データ、ビットマップ画像データともDTP データとして利用可能な汎用データ形式とし、標準的なDTP ソフトで編集が可能であることが望ましい。
  • 外部ファイルは特定のフォルダに格納しておくなどのルールを決め、データ管理を徹底する。
  • ファイル名や拡張子の付け方などのルールも決めておく。
  • 拡大教科書で変換する書体と互換性のある書体を使用する。

(3)効率化のための留意点・応用

効率化のための留意点 効果・応用
(a)テキストフレームの連結・適応

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  • テキストの一括変換等可能になる。
  • フレームを2カ所に分割しても、連結先へ文字が送られ文章の連続性が確保される。
  • 変換後、本文の脱落等の防止。

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  • 原本データの制作状態により、フレームの連結を確保する。
  • ページ分割でページをまたいで一連のテキストをレイアウトする場合、フレーム連結機能を利用するとテキストが途中で分断されることなく、調整も行いやすい。
  • テキストフレームはフレームグリッドと使い分ける。フレームグリッドは拡大の微調整が困難。
(c)スタイルによる一括処理

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文字の大きさ、書体、字間、行間等で複数の文字組版属性を設定し、任意のスタイル名で登録しておく。それをページ上のテキストに対して適用することで、一度に複数の属性を指定する機能である。

  • 同一書籍内ではこれらのスタイル表現を統一して使用されることが多く、要素ごとに一種類のスタイルを作成しておくことで、文書内に繰り返し出現する見出しや本文のスタイルの設定が容易に行える。
  • 主なテキスト要素や文字要素にスタイルを作成し、該当するテキスト要素にスタイルを適用する。ただし、スタイル数が多くなると管理と変更の設定変更にかかる作業に負荷がかかるため、登録数を増やし過ぎないようにする。

4.3 教科別ページ特性と拡大教科書の作成

第3章において、協力教科書発行者の提供による社会・英語の原本教科書サンプルを使用し、教科別の特性を分析した。昨年度に行った国語・算数・ 理科と合わせて主要5教科に関しての分析を行ったが、教科ごとの学習指導要領にもとづく学習内容・目的・学習方法等の違いがあるため、同じ教科書とはいえ 「教科書コンテンツ」としての表現はかなり多様である。さらに各教科書発行者においても編集方針は様々であり、各教科書発行者の創意工夫が大きく教科書の レイアウトに表れている。版型も基本はB5サイズであるが、AB、B5変、A4サイズなど様々で、特に図説など多用する場合には幅広のAB、B5変サイズ も使われている。

本項ではこれらの教科別の一般的な特徴に注目し、拡大教科書に変換する際の注意点などを下表にまとめている。特に内容情報の連続性に関しては、拡大教科書の作成時にどのように文字を拡大してページ分割を行うかという方針を決める上で非常に重要である。

科目 (a)ページ構成と表現の特徴(教科書情報の流れ、図・写真の使い方) (b)拡大教科書に変換する際の注意点 (c)標準規格における留意事項
国語(中学国語)書写 【本文体裁】

  • 右開き縦組み版
  • 小学国語、5社中:B5サイズ(5社)、中学国語、5社中:B5サイズ(4社)A5サイズ(1社)
  • 本文中心。連続的で読む要素が強い

【レイアウトの特徴】

  • 図、写真、挿絵など、文章の内容を補足する役割に用いられている。

【その他】

  • 日本語の忠実な表現に努めなければならない。(平仮名、片仮名の表現など)
    ※参考小学書写、2社中:B5サイズ(1社)、B5変(1社)
  • 内容が連続的で「読む」要素が強い。
  • 物語の挿絵や文章の内容を補足する絵など、内容によって拡大の必要性に差がある。
  • 人名、地域特性など、漢字の字体・字形の違いがある。(包摂規準に準拠)
  • オリジナル書体の使用がみられる。
  • 新出漢字、筆順学習、書写など特殊なページがある。
① 文字の字体(平仮名、片仮名の導入)

  • 小学1年での、平仮名、片仮名を初めて学習する部分では、字体として教科書体を用いる。
    (新出漢字)
  • 新出漢字欄や、巻末の漢字一覧表の漢字等、漢字の字体や書き順等を学習する必要のあるものについては、字体として教科書体を用いる。
    (書写)
  • 書写の手本等、そのまま示す必要があるものについては、原本教科書と同じ字体とする。

② 図・写真等(挿し絵等)

  • 物語文等の挿絵等、本文の読み取りにあまり関わらない図・写真等については、拡大等の修正は行わなくてもよいこととする。
算数(中学数学) 【本文体裁】

  • 左開き横組み版
  • 小学算数、6社中:B5サイズ(5社)、B5変(1社)
  • 中学数学、7社中:B5サイズ(7社)
  • 本文、解説、問題など構成されている。
  • 情報の流れは、連続的であるが図表・記号・公式など多くの内容表現が複雑。

【レイアウトの特徴】

  • 記号・計算式がある。
  • 本文と図表を参照する必要がある。
  • 解説で・図・イラスト・写真が多く使われる。

【その他】

  • 巻末に問題集、または付録がある(図形工作、スケールなど)
  • テキストと図表が密接に関係している。
  • 本文と巻末ページなどにある問題集を交互に参照する場合がある。
  • 記号、数式、アルファベットなど、フォントの文字幅の違い等により“文字化け”が起こりやすい書体の使用頻度が高い。
① 文字の大きさ(添え字(指数等))

  • 指数等の添え字については、見えやすいように、大きくする。その大きさとしては、数字の2分の1程度以上の大きさにする。

② 文字の字体

  • 変数、定数、単位記号、演算記号等については、原本教科書で用いられている字体と同じ字体を用いるものとするが、見えにくい場合は、線が太い字体を用いる等、配慮する。
    (数式)
  • 演算記号と数、定数等が近接して読み取りにくい場合は、その間隔を、少しあけるように配慮する。
    (ドット(小数点等))
  • 小数点等のドットについては、見えやすいように大きくする。その大きさとしては、数字の線の太さと同じ程度の直径にする。

③ 図・写真等(図形)

  • 図形の輪郭線で、見えにくいものについては、線を太くする。
  • 図形を構成する線と補助線等を区別できるように、線の太さや種類を変える等、配慮する。
  • 頂点を示す点等、見えにくい点については、見えやすいように、大きなものにする。
    (実測の目盛等)
  • 定規の目盛等、実測するために原寸で示す必要のあるものについては、拡大せず原寸で示す。ただし、詳しく読み取る必要のある部分については、そこだけを取り出して拡大して示す等、配慮する。
理科(中学理科:第一、第二) 【本文体裁】

  • 左開き横組み版
  • 小学理科、6社中:ABサイズ(3社)、B5(3社)
  • 中学理一、5社中:B5サイズ(4社)B5変(1社)
  • 中学理二、5社中:B5サイズ(4社)B5変(1社)
  • 図が本文に先行することもある。

【レイアウトの特徴】

  • 図、イラスト、写真が多用される
  • 全体を俯瞰して見るページが多い。
  • 1項目、1見開き構成が多い。

【その他】

  • 特殊なレイアウトとして、片観音開き、または両観音開きで連続的な内容を見せるものもある。
  • 巻末に資料、付録がある
  • 記号、数式、アルファベットなど、フォントの文字幅の違い等により“文字化け”が起こりやすい書体の使用頻度が高い。
  • 図説が多い。
  • 詳細なイラストが多い。
  • 資料など巻末ページとの関連も多く、分冊時に検討が必要。
  • 全体を俯瞰して見るページがある。
(原寸表示)

  • 虫の卵や植物の種等、原寸で示されている写真については、拡大教科書でも原寸表示とする。ただし、それを詳しく読み取る必要がある場合は、別に拡大して示す等、配慮する。
  • 鉱物の顕微鏡写真等、倍率が付されて示されているものについては、拡大教科書でも、そのまま示す。ただし、それを詳しく読み取る必要がある場合は、別に拡大して示す等、配慮する。
社会(中学社会:地理、歴史、公民) 【本文体裁】

  • 左開き横組み版
  • 小学社会、5社中:ABサイズ(3社)、B5(2社)
  • 中学地理・歴史・公民すべてB5(計23社)
  • 図が本文に先行することもある。

【レイアウトの特徴】

  • 全体を俯瞰して見るページが多い。
  • 図・イラスト・写真が多用される
  • 1項目、1見開き構成が多い。

【その他】

  • 特殊なレイアウトとして、片観音開きまたは両観音開きで連続的な内容を見せるものもある。
  • 人名、地域特性など、漢字の微妙な字体の違いなど。
  • テキストと図表が密接に関係している。
  • 人名、地域特性など、漢字の字体・字形の違いがある。(包摂規準に準拠)
  • 全体を俯瞰して見るページがある。
  • 内容が多岐にわたる。
(地図)

  • 地図全体を拡大したのみでは見えにくい地図中の文字や地図記号等で重要なものについては、拡大して打ち直す。文字や地図記号が背景にまぎれて見えにくい場合、白色背景の長方形や輪郭等をつけた中に、拡大した黒文字で打ち直す。
  • 海岸線、地域の分割線、河川等、見えにくい線の要素で重要なものについては、コントラストを上げる、背景色を薄くする等、見えやすいようにする。
  • 日本地図全図等、拡大すると1ページに収まらない場合は、分割して示すことも検討する。ただし、その分割は地域のまとまり等、学習上のまとまりに留意する。
  • 地図に縮尺を示すものがある場合は、その拡大率も地図と同じ拡大率にして同じ比率にする等、配慮する。
    (写真等)
  • 歴史上の人物画や美術品の写真等、そのまま示すことが必要なものについては、そのまま提示することとし、必要であれば拡大のみして示す。その中に、文字等読み取る必要のある情報がある場合は、それのみ抜き出して拡大して提示する等、配慮する。
中学英語 【本文体裁】

  • 左開き横組み版

中学:B5サイズ(6社)

  • 本文中心。連続的で読む要素が強い。
  • 本文に新出単語が入る。

【レイアウトの特徴】

  • キャラクターイラスト・写真が多用される。
  • 1項目、1見開き構成が多い。
  • リーディング、文法のページなど。

【その他】

  • 発音記号などがある。
  • 授業の形式が読みを伴う場合が多い。
  • 2ページに渡って交互に展開される会話テキスト等がある。
  • 原本に使用されているアルファベットの書体数がそもそも多い。
  • 連続的で比較的「読む」要素が強い。
  • 記号、数式、アルファベットなど、フォントの文字幅の違い等により“文字化け”が起こりやすい書体の使用頻度が高い。
  • 発音記号などが特殊な文字がある。
文字の字体(アルファベット等の字体)

  • アルファベットの字体については、原則はゴシック体とする。
  • ブロック体、イタリック体等で示されているものについては、その字体とする。ただし、見えやすいように、線が太いものを用いる等、配慮する。
  • 発音記号については、見えやすいように、線の太いものを用いる等、配慮する。
    (巻末資料)
  • 巻末資料の単語集等、各分冊で使用することになるものについては、別冊にする等、配慮する。

4.4 原本教科書のレイアウトによる拡大教科書の展開方法

拡大教科書の展開において、原本教科書1ページのコンテンツを2ページに分割して再レイアウトする場合の難易度は、元々のページのレイアウトの 複雑さによって左右される。本項では、原本教科書サンプルの中から一般的なページレイアウト、見開き2ページ完結型などのレイアウトのパターンを抽出し、 それぞれを拡大教科書にした時の作業性と拡大教科書の構成イメージを検証した。原本教科書の見開き2ページ完結型レイアウトでは、左右のページに内容が分 散し、ページを交互に読んでいくことになり、拡大教科書の再レイアウトの難易度が高くなる。

例えば、複雑なレイアウトにもかかわらず、すべての写真や表を拡大する上に文字も22ポイントまで拡大すれば、必然的にページ数は増大し、1 ページの分割が4〜8ページなどかなりの枚数に増加することになる。これらのページの増大は内容が読み取りにくくなり、本の厚みや分冊数も多くなるという デメリットもある。全ての内容を拡大するか、写真・イラストなど個々の拡大率を多少犠牲にしても使い勝手を優先するかという拡大教科書の拡大方針は教科書 発行者によって大きく分かれるところである。

本項では、原本教科書のレイアウトのタイプ別に、拡大教科書の展開と分冊についてケーススタディを行い、その展開方法と問題点をまとめている。特に複雑なページの拡大の場合、情報の流れとページ番号において不具合が生じ、ページが増大する原因などをまとめている。

(a)【一般的なページの例】

レイアウト要素の配置順序は、各ページで上から下へ直線的に並んでいる。

4-4-1

※例は横組みで、連続したコンテンツを見開き2ページでまとめている。

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【原本1ページを2ページに分割し、再レイアウトした拡大教科書の例】

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  • この場合、情報の連続性は確保され、再レイアウトは比較的容易に行える。
  • 内容に影響のない範囲で、写真やイラストなど拡大を制限する。

【原本1ページを4ページに分割し、再レイアウトした拡大教科書の例】

  • この場合、情報の連続性は確保され、再レイアウトは比較的容易に行える。
  • 写真やイラストも拡大できるが、全体を俯瞰することができない。
  • ページ数が多くなり、結果分冊なども増える。
【縦書きの例】

4-4-5

→

  • 国語など縦書きで内容の連続性がある場合、拡大時も連続性は確保され、再レイアウトは比較的容易に行える。

(b)【原本教科書の見開き2ページ型レイアウト例】

レイアウト要素の配置順序は、見開き2ページで左から右へ直線的に並んでいる。

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※例は横組みで、連続したコンテンツを見開き2ページでまとめている。

→ 見開きでページをまたいだ一連の要素を、拡大教科書ではページをめくることで分断することになるが、この場合は情報の連続性に配慮し再レイアウトしなければならない。

【各ページを2ページに分割し、再レイアウトした拡大教科書の例】

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【原本1ページを4ページに分割し、再レイアウトした拡大教科書の例、情報順位を優先した場合】

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  • この場合、情報の連続性は確保されるが、ページ番号が飛び飛びになる。
  • 写真やイラストは拡大できるが、ページ番号との関係を確認しにくい。

【原本1ページを4ページに分割し、再レイアウトした拡大教科書の例、ページ番号を優先した場合】

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  • この場合、情報の連続性は確保されるが、ページ番号が飛び飛びになる。
  • 写真やイラストは拡大できるが、本文との関係を確認しにくい。

(c)【原本教科書の見開き2ページ型レイアウト例、特殊なレイアウト】

中央の写真等を中心に様々な図説がレイアウトされている場合。

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※例は横組みで、連続したコンテンツを見開き2ページでまとめている。

→ 【中央の写真を2ページに配置し、再レイアウトした拡大教科書の例】

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  • ページ番号の付け方が変則的になる。
  • 4ページに拡大の場合はさらに複雑になる。

(d)【分冊化】

拡大教科書を作成する場合、ページ数が増えるため分冊化は必要であるが、分冊することで1冊の教科書コンテンツが分断される弊害もある。

1冊すべての章の練習問題が巻末にまとまっている場合、章の切れ目で分けると分冊の中に練習問題を含まないものが生じる(右図の例A)。このため、巻末の該当する練習問題ページを各分冊の巻末に移動し、ページ番号や目次などを再編集する必要がある(右図の例B)。

→ 【各章の練習問題が巻末にまとまっている場合の分冊の例A、例B】

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各章の練習問題が章の末尾にまとまっていれば、分冊する場合、章単位で分割できるためページの再編集が不要である。 → 【各章の練習問題が章の末尾にまとまっている例】

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4.5 追記事項

(1)拡大教科書の仕様書等の必要性

小中学校の一般学級で使用される拡大教科書を想定する場合、原本教科書を基本に進められる授業を受けるため、原本教科書とのレイアウトとの差異を少なくするような再デザインの配慮がきわめて重要になってくる。

とはいえ、これまで検証してきたように、拡大する際は教科書コンテンツの編集意図を損なわないよう再レイアウトがなされるため、原本教科書とは 異なる体裁になることも少なくない。よって、授業中に生徒と教員に不便が生じないよう、原本教科書の1ぺージが拡大教科書で何ページにもおよぶ場合や、拡 大する際に一定の方針がある場合等は、その拡大教科書の編集方針を仕様書や使い方説明書として添付するなどの配慮を検討すべきではないだろうか。

(2)「見る教科書(ページ)」の拡大方針

教科書発行者による拡大教科書は標準規格にもとづいて作成され、最も多くの弱視程度に合わせた文字通り「標準的」な仕様を目指している。本章に おける「見る教科書」では、例えば見開きの2ページを自由に使ってレイアウトされた内容などがみられるが、こうしたページに含まれるすべての文字を22ポ イントに変換することによりページが増大してしまう場合が多い。弱視生徒のための拡大教科書においては文字の拡大が最優先事項とされるのはもちろんである が、情報量の多いページや見開きを俯瞰して見る要素が強いページの場合、あまりに多くのページに分割されることがないようにコンパクトにまとめる方が結果 としてわかりやすい場合がある。拡大教科書は弱視生徒の読みやすさに合わせた仕様であるべきだが、常に教科書に内包された授業案を見据えて、拡大教科書も 作成されなければならない。

4.6 原本教科書DTPデータ チェックシート

以下は、拡大教科書作成の効率性を見極めるための原本教科書DTPデータのチェックシートである。

項目の内容にあてはまるものには、□にチェックマーク(✓)を付け、全て回答した後、チェック項目数を照合表の合計欄と照合し、効率性の度合いを参照する。

1 製作環境

1.1 ソフトウエアの互換性

□ 自社、製作協力会社、印刷会社間で互換性のあるソフトウエアを利用している。

1.1 フォントの互換性

□ 自社、製作協力会社、印刷会社間で互換性のあるフォントを利用している。

2 データ作成

2.1 ページレイアウトデータの作成方法

□ ページレイアウトソフトを使用し、1冊分(または章ごとの)のページを1ファイルで作成している。

□ ページレイアウトソフトは、InDesign(またはQuark Xpress)を使用している。

□ Illustratorは、図表を作成するために使用しているが、ページレイアウトソフトとして利用していない。

2.2 本文や図表に使用するフォント

□ 標準フォントと互換性がある商用フォントのみを使用している。例)モリサワ、イワタ等のフォントメーカーのフォント。

□ 標準フォントと互換性のない商用フォントは使用していない。例)ビブロス等の外字フォントメーカーのフォント。

□ 標準フォントと互換性のないオリジナルフォントは使用していない。例)出版社が自社で開発した独自のフォント。
注)標準フォントとは、基本ソフトに付属する書体を指す(MacOS Xのヒラギノ角ゴシック、ヒラギノ明朝など)。
注)標準フォントと互換性があればそのフォントが指定された文字や記号を標準フォントに変更しても”文字化け”しない。

2.3 合成フォントの使用

□ 標準フォントと互換性があるフォントのみで合成フォントを作成、使用している。

□ 合成フォントを使用していない。

2.4 テキストのスタイル指定

□ 段落・文字スタイルの機能を利用している。

□ 段落・文字スタイルをすべてのテキストに適用している。

2.5 図・写真等の画像データのスタイル指定

□ オブジェクトスタイルを一部の画像データに適用している。

2.6 ベクトル画像編集ソフトで作成した図表のテキスト

□ テキストは、図形化していない。

3 ページレイアウトデザイン

3.1 節(または項)単位のコンテンツを納めるページ数

□ 1ページ毎にレイアウトされている場合が多い。

□ 見開き(2ページ)でフリーなレイアウトのページがない。

3.2 見開き(2ページ)のレイアウトデザイン

□ 横組みの場合、情報が左ページの上から下、右ページの上から下の順で連続するレイアウトにする場合が多い。

□ 縦組みの場合、情報が右ページの右上から左ページの左下の順で連続するレイアウトにする場合が多い。

3.3 余白(天地、のど・小口)

□ 1ページの面積の25%以上余白がある。

3.4 マスターページの利用

□ 複数ページで共通するページフォーマットにマスターページを利用している。

4 書籍の構成

4.1 上・下巻に分冊されている場合

□ 上・下巻ごとに関連する索引・資料・問題集がまとまっている。

【照合表】
合計 効率性
16~ 高い
12~15 やや高い
8~11 普通
4~7 やや低い
0~3 低い