研究拠点形成事業 現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究〜サマルカンド紙の復興を中心に〜

柴崎研究室では、独立行政法人日本学術振興会  研究拠点形成事業(B.アジア・アフリカ学術基盤形成型)による研究を実施致します。(平成29年4月から32年3月まで)

このカテゴリーでは、研究に関する情報を提供致します。

【研究概要】

研究拠点形成事業(B.アジア・アフリカ学術基盤形成型)

研究交流課題名 現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”の研究 〜サマルカンド紙の復興を中心に〜

英語名 The research for the culture of contemporary Hand-Made Paper and artistic expression. ~With the focus on the revival of Samarkand paper~

日本側拠点機関名 愛知県公立大学法人 愛知県立芸術大学 Aichi University of the Arts

日本側コーディネーター所属・氏名 美術学部デザイン専攻教授・柴崎幸次  Faculty of Art, Professor, Koji Shibazaki

相手国及び拠点機関名 

①ウズベキスタン共和国  National institute of fine art and design named after Kamoliddin Bekhzod(以下ウズベキスタン芸術大学)

②中華人民共和国・大連民族大学  Dalian Nationalities University

③大韓民国・檀国大学校  Dankook University

 

研究交流計画の目標・概要

本研究は、ウズベキスタンと日本、中国、韓国の芸術大学において、“手漉き紙”文化と“芸術表現”をテーマに調査・復興・再生を目指し、美術やプロダクト、文化財保存修復に応用できる紙と技法を開発する活動を、芸術大学の連携により成し遂げるための芸術・文化拠点の形成を目指している。

“紙”は、人類の根源的な文化形成における重要なメディアとして発展と交流、多様化を繰り返してきた。しかし、古来から伝わる“手漉き紙”文化は世界的に衰退傾向にあり、それらは大量生産時代の経済性や生活そのものの近代化など需要の変化によるものである。例えばウズベキスタンのサマルカンド紙は、硬筆によるカリグラフィー(書)やミニアチュール(細密画)の支持体として世界で最も美しいと言われた紙であるが約200年前に途絶えている。また、日本の和紙もユネスコの世界文化遺産として国際的な評価を得ているにもかかわらず、現在も衰退傾向が続き、後継者不足、従事者数の減少などに多くの問題を抱えている。

一方、紙の歴史や伝播をみると、タラスの戦い(751年)以降、この拠点形成を目指すアジアの国々は、過去1300年以上さかのぼっても“紙の道”として強いつながりを持つ関係にある。近代以前の紙の製法は人力と自然力によるもので、地域性、歴史性を象徴する多くの文化の跡が潜んでおり様々な情報を読み解くことができる。また紙に書(描)かれた文字や図、絵画などの表現は、日本、中国の古典絵画や、ウズベキスタンのミニアチュールなど、文化、経済、宗教など様々な目的の情報伝達を果たしてきた

この“手漉き紙と芸術表現”の課題を芸術大学の連携により研究することは、国際的な芸術の分野において地域性と時間軸を縦横に結ぶ文化を融和させる取り組みであり、単なる伝統的な紙や技法の復元ではなく、新たな技術や概念を形成し、現代ニーズに向き合うメディアとプロダクトを生み出しうる研究交流の形を目指すことができる。また本計画はウズベキスタンのサマルカンド紙の復興を軸に、紙の道(アジアを結ぶペーパーロード)として、日本側のリーダーシップと中国、韓国との協働により、保存修復の文化事業や新素材の開発、新しい芸術活動への応用など“手漉き紙と芸術表現”の意味を現代において再定義し、各国の独自性と多様性の表出による地域文化の醸成を目指すことを目標としている

 

[研究交流計画の概要]①共同研究、②セミナー、③研究者交流

①“手漉き紙と芸術表現”のあり方を見出す調査研究として、まずは各国の紙文化の歴史評価(中国紙、韓国紙、サマルカンド紙、和紙、さらに洋紙)と古典絵画(絵巻、山水、仏画、イスラムのミニアチュールなど)、現代絵画、版画など、芸術表現の紙との関係について調査を行う。中でも200年前に衰退し資料の少ないサマルカンド紙関連の調査を共同で行い、特性分析や各時代の紙の調査、ペンなどの硬筆に適したサマルカンド紙と洋紙文化圏への発展経緯を見極める。また毛筆に適し中国から朝鮮半島を経て伝わった和紙への表現に対する同時代分析、さらに輸出品として流通した国際的な紙の交流を中心に調査を実施する。

②セミナー共通のテーマは、「現代に生きる“手漉き紙と芸術表現”とは」を掲げている。各国で1年毎に展示発表を伴うセミナー、意見交換、視察(紙生産地、博物館等)を開催する。各国テーマは、Revival & Grow(復活と進化)[ウズベキスタン]、Origin(起源)[中国]、Diversity(多様性への評価)[日本]とし、さらに付加価値の高いメディアとプロダクトの開発、オーダーメイド紙(多品種少量)の生産、現代における手仕事文化の復権、紙の持つ情報価値などの議論を想定している。

③研究者交流としては、“紙からつくる芸術表現行動”をテーマに、“紙”ありきで制作に入る態度を見直し、新たなオリジナリティを生み出す活動として各国の若手育成の要としたい。その上で“手漉き紙”文化の再定義により新たなメディアとプロダクトの開発を試み、表現技術(古典技法から先端技術まで)を交流の上、作品制作と国際交流展での発表をもって本研究を推進する。

 

[実施体制概念図]本事業による経費支給期間(最長3年間)終了時までに構築する国際研究協力ネットワークの概念図